朗読シアター

ごんぎつね

童話「ごんぎつね」は、愛知県半田市出身の童話作家、新美南吉の代表作です。
新美南吉は、いまから約100年前の大正2年(1913)に生まれました。4歳で母を亡くし、8歳で養子に出されるなど、さびしい子ども時代をおくっています。中学2年生の頃から童謡や童話を創り始め、中学を卒業した昭和6年(1931)から雑誌『赤い鳥』に作品が載るようになりました。当時、母校の小学校で代用教員をしていた南吉は、子どもたちによく自作の童話を話して聞かせました。そうしたお話のひとつが「ごんぎつね」だったといいます。
また、作品の冒頭では「これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です」と前置きされています。つまり、「ごんぎつね」は、二重の意味で語られることを意識して書かれた“物語”なのです。だからこそ、「ごんぎつね」は耳から聞いてよくわかり、どんどんひきこまれていく面白さがあるのです。
こうして生まれた「ごんぎつね」は、『赤い鳥』に投稿され、昭和7年1月号に掲載されました。南吉18歳の時のことです。
その後、南吉は病に倒れ29歳で亡くなります。しかし、「ごんぎつね」は昭和31年(1956)から小学校4年生の国語教科書に採用され、昭和55年(1980)以降はすべての教科書に載っています。数々の絵本にもなり、今では世代を超えて愛される国民的童話となりました。

【解説】
新美南吉記念館
学芸員 遠山光嗣氏