ジブリの立体建造物展

2016.7.15FRI~9.25SUN 豊田市美術館

みどころ

部分を見れば、全体が見える。

スタジオジブリは1985年の創立以来、多くのアニメーション作品を発表してきました。作品中にはドラマが起こる舞台として、沢山の「建造物」が登場します。本展覧会では出発点となった「風の谷のナウシカ」から、「思い出のマーニー」まで、作品に登場する建造物の、背景画や美術ボード、美術設定といった制作資料を公開。代表的な建造物を立体で表現し、その設計の源に触れます。
一般に、建物の持っている魅力とは何でしょうか。その一つは建物と人との接点にあります。人が住む建物は、人の暮らしに欠かせないものです。しかし近年に見られる建物は本来の魅力から離れ、人と建物に大きな距離があるように感じられます。それは私たちが、一番近くにいるのに見落としているものの一つであり、ふと気づくと忘れてしまいそうなものです。
一方、スタジオジブリがアニメーションという架空の世界の中で創造してきた、数多くの建造物たち。「油屋」を始め、「カルチェラタン」、「ハウルの動く城」、「万福寺」、「グーチョキパン店」、「草壁家」、「ラピュタ城」等々、毎作、その作品を特徴づける個性的な建造物がいくつもデザインされてきました。それらの魅力はアニメーションの世界だけに留まるものではなく、どれも印象的で、どこかに実在していそうな存在感のあるものばかりです。
映画というもの、とくにアニメーション映画は画面に映るすべての世界を描き出さなくてはなりません。しかし見方を換えれば、理想を映し出せる装置と言えます。この中で空想された建造物。しかし、ただの「空想」とは違います。現実の世界を注意深く観察した上で、登場人物の生活、時代などの想定、検証を十二分に経てデザインされたものであり、何より登場人物との関係性が建物としての魅力を高めています。
それは私たちが生きる、現実世界でも同じことです。あらゆる文化、あらゆる環境に合わせて建つ建物の中で、あらゆる人が生活をしています。
本展覧会に展示される作品を入り口とし、人と密接な関係を持つ、建物の魅力が伝われば幸いです。

空想的で現実的な建物

ジブリのアニメーションに登場する建物には、他とは違う特徴があり、現実的であると同時に空想的です。
たとえば、『千と千尋の神隠し』の湯屋も、『ハウルの動く城』も、姿形はとても空想的なのに、間取りや構造や材料や細かい作りを見ると、用途や力学を理解したうえで想像力をはばたかせていることが分かります。
お金と時間さえかければちゃんと出来るー見る人にそう思わせる力があるのです。
もう一つの特徴は、『となりのトトロ』のサツキとメイの家が洋館と和館の二つからできていることです。少し難しくなりますが、人間の中には意識と無意識の二つの領分があり、この家の場合、明治時代にヨーロッパから新たに入ってきたオシャレな洋館は意識の、伝統と共に長く長く生きてきた和館は無意識の、それぞれ器となっています。
そして、子どもにしか見えないススワタリがこの家に住み、やがてトトロのところに移ってゆきます。 大人と子ども、意識と無意識、人工物と自然、そんな問題を考えながらジブリの建物を見ることも可能です。 本展監修:建築家 藤森照信

藤森照信(ふじもり・てるのぶ)

1946年、長野県生まれ。建築家、建築史家。東京大学名誉教授、工学院大学特任教授。

  • ’71年、東北大学工学部建築学科卒業。
  • ’78年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程満期退学。
  • ‘80年、東京大学にて工学博士号取得。東京大学生産技術研究所教授、工学院大学教授を歴任。『明治の東京計画』(岩波現代文庫)で毎日出版文化賞、『建築探偵の冒険・東京篇』(ちくま文庫)でサントリー学芸賞受賞。
  • ’91年、「神長官守矢史料館」で建築家としてデビュー。
  • ’97年、「赤瀬川原平氏邸(ニラ・ハウス)」で日本芸術大賞、2001年、「熊本県立農業大学校学生寮」で日本建築学会賞受賞。
  • ’06年、第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展で日本館コミッショナーを務める。その他の著書に、『日本の近代建築』(岩波新書)、『人類と建築の歴史』(ちくまプリマー新書)、『藤森照信建築』(TOTO出版)、『藤森照信の茶室学 日本の極小空間の謎』(六耀社)など多数。