ピエール=オーギュスト・ルノワール《黒い服を着た婦人》

ピエール=オーギュスト・ルノワール《黒い服を着た婦人》
1876年 油彩・カンヴァス

©Photo: The State Hermitage Museum, St. Petersburg, 2012

自然の明るい光を追求した印象派の画家たちは、パレットから黒を追放したといわれるが、ルノワール(1841-1919)は例外である。黒の魅力を知り尽くしていた彼は、印象派最盛期の1870代にも黒を利かせた名作を数多く残しているが、これもその一点。モデルは不明だが、素早い筆さばきで描かれたその姿には、重苦しさや冷たさは微塵も感じられない。ハイライトを入れた目の輝きや、柔らかな温もりを感じさせる肌の表現など、僅かなタッチで作り上げられたモデルの暖かな存在感は、まさに名人芸である。