2007年04月08日放送
「鉄」
今回のテーマは「鉄」!
身近な金属である「鉄」の不思議な魅力に迫ります!
→ 過去の実験一覧はコチラ!!
■地球は鉄の星?
皆さんにもお馴染みの金属「鉄」ですが、
実は地球の約30%は鉄で出来ているんです。
ちなみに鉄の原料となる鉄鉱石は、人間が採掘出来る範囲だけでも
何と約2320億トン!
次に多いといわれるアルミ原料のボーキサイトでも
280億トンと言われているので、
その量の多さはずば抜けています。
まさに地球は鉄の星!
■「鉄」が出来るまで
様々な製品に形を変え、暮らしの中で使われている「鉄」は
どのように作られているのでしょう?
その秘密を探るためにラブラボ!スタッフが製鉄所に調査に行きました!
- 鉄の原料は鉄と酸素が結合した「鉄鉱石(てっこうせき)」。
この石のキラキラ光っている部分が鉄になる。
- 鉄鉱石から鉄を作る機械。それが「高炉(こうろ)」。
この「高炉」の中に、鉄鉱石と石炭を入れ、
約1200度の熱風で液状に溶かす。
鉄を酸化(サビ)させている酸素(O2)は、
鉄(Fe)よりも炭素(C)と結合しやすい。
この性質を利用し、鉄を取り出している。
取り出された鉄は「銑鉄(せんてつ)」と呼ばれ、
炭素を多く含むため割れやすい。
- その「銑鉄」を強い状態にする機械が「転炉(てんろ)」
「高炉」で取り出された「銑鉄」には、
まだ約4%ほどの炭素が混ざっている。
「転炉」の中に銑鉄を入れ、そこに酸素を吹き込んでいく。
すると銑鉄の炭素と酸素が反応し、
銑鉄の中の炭素を0.04%まで減らすことができる。
銑鉄の中の炭素の量を減らすことによって、鉄は強くなる。
この強くなった鉄を「鋼(はがね)」と言う。
この「鋼」を加工することで、私達の知っている様々な鉄製品になる。
※ラブラボ!豆知識…「高炉」は、とても背の高い建物だから「高炉」と呼び、
「転炉」は「銑鉄」を入れる器が回転するから「転炉」と呼ぶ。
■電子レンジを使って鉄を作ろう!
<準備するモノ>
- 電子レンジ
- ベンガラ(酸化鉄の一種、顔料などに使われている。)
- 木炭の粉
- 小さな器
<作り方>
- ベンガラと木炭を混ぜてから、小さな器に入れる。
- 電子レンジの中へ入れて、2分程温める。
- しばらくするとベンガラと木炭が混ざった粉が燃えてくる。
温め終わった粉を取り出して、掘ってみると中に鉄が出来ている。
注意:
専門家の指導のもと、実験として行いました。
電子レンジで温めた粉は高温になるので気をつけましょう。
■もっと見やすい方法で鉄を作ってみよう!
<準備するモノ>
- ベンガラと木炭の粉を混ぜたモノ
- 炭素の棒(えんぴつの芯)
- ドライヤー
- 導線
- サングラス
- 耐熱ボード
<作り方>
- 耐熱ボードの上にベンガラと木炭を混ぜたものを山型に乗せる。
- コンセントにドライヤーを差し込み、
ドライヤーの+(プラス)と−(マイナス)に導線を2本繋ぐ。
さらに、2本の導線の先に炭素の棒を固定する。
炭素の棒は黒鉛(こくえん)で出来ているため電気を通す。
- あとは、炭素の棒を山盛りの粉の中へ入れ、先端同士をくっつける。
すると炭素の棒を通して電気が流れ、粉から火柱が上がる。
ある程度、時間が経つと、粉の中に銑鉄が出来上がっている。
【解説】
ベンガラは酸化鉄の一種のため酸素を含んでいる。
このベンガラを炭素と一緒に加熱すると、ベンガラに含まれる酸素が
炭素と反応してくっつくため、ベンガラは鉄になる。
これは酸素が鉄より炭素と結合しやすいため移動するのである。
電子レンジで作った鉄も、この反応と一緒のことが起こっている。
注意:
専門家の指導のもとで実験を行いました。
粉から火柱が立つときに、激しい閃光を発します。
サングラスをかけて閃光から目を守って下さい。
また、この粉も高温になるので気をつけましょう。
この実験をやる場合には必ず大人の指導監督のもとで行って下さい。
■謎の物体!?黒いスライム
鉄の特徴を利用した不思議なスライムを作って遊ぼう!
<準備するモノ>
- コップ×2
- 水
- お湯40ml
- 硼砂(ほうしゃ)
- 砂鉄20g
- 洗濯のり20ml
- 粘土
- 磁石
<作り方>
- 水をコップ1/4まで入れる。
この水の中に硼砂をかき混ぜても溶けきれなくなるまで入れる。 - 1のコップとは別のコップにお湯を40ml入れる。
さらに、砂鉄20gと洗濯のり20mlを入れ、
よくかき混ぜる。 - 2のコップに1のコップの中身を入れかき混ぜる。
すると、液が固まって黒いスライムの完成。 - 次にエサを作る。
磁石を粘土で包み込み、丸める。
<遊び方>
不思議なスライムの近くにエサを置く。
すると、スライムが勝手に動き出し、エサを食べてしまう。
【解説】
鉄は磁石に敏感に反応する。
スライムの中に鉄粉を混ぜることによって、
粘土の中に入っている磁石に反応して、
まるでエサを食べているかのように飲み込んでいく。
鉄のように磁石に反応しやすいモノを
「強磁性体(きょうじせいたい)」と言う。
■謎の黒い液体
<実験内容>
磁石の上に番組で用意した黒い液体を近づけると・・・
<実験結果>
黒い液体の表面がウニのようにトゲトゲになった!
【解説】
この黒い液体は「磁性流体(じせいりゅうたい)」と言い、
細かい鉄の粉を界面活性剤(かいめんかっせいざい)などを使って
液体状にしたものである。
この「磁性流体」に磁石を近づけると液体が磁石のようになる。
これにより液体の下の方は磁石と引き合い、
逆に上の方は同じ※磁極(じきょく)を持つため反発する。
そのため、液体がウニのようにトゲトゲに見える。
※磁極・・・
磁石の鉄を引きつける性能の最も強いところ。
磁石の両端にあり、それぞれをS極・N極と言う。
■形を変える不思議な鉄
<実験内容>
フタの支点部分にバネを固定した箱に、
ドライヤーでバネを目掛けて熱風を当てると・・・
<実験結果>
触ってもいないのに勝手にフタが開いた!
【解説】
この箱に付いているバネは
「形状記憶合金(けいじょうきおくごうきん)」で出来ている。
この「鉄製形状記憶合金」は鉄とマンガン・ケイ素などの合金で、
温度に反応して、あらかじめ設定された形に変わるというもの。
箱に付いたバネがドライヤーの熱風に反応して設定された形に戻ったため、
フタが開かれたのである。
他にもクローバーの形にあらかじめ設定されたモノを用意し、
伸ばしきった状態でお湯に漬け込めば、
勝手にクローバーの形に戻ったりと色々と面白いことが出来る。
このように、鉄は他の物質と混ぜることによって様々な能力を発揮する。
★番組からのお願い★
「ラブラボ!」は大人から子供までを対象に、教科書等の理論だけでなく、実験を通して楽しく遊びながら、実際に体験し・手先を動かし・自分で工夫をこらす事によって科学を理解し、興味を持つきっかけとなれるような番組を目指しています。
その為、当HPでも皆さんの参考にしていただけるよう、番組で紹介した初歩的な科学実験の一部を掲載していますが、実験によってはカッターやハサミ等の刃物や小さな部品、工具等を使ったり、火気やドライアイス、家庭用洗剤等の薬品を使うモノもありますので、ご家庭で行う場合には各自の責任において十分にご注意下さい。
また実験や工作に小さなケガは付き物ですが(紙一枚でも手が切れたりします)、正しい手順と(器具の)正しい使用で危険は大きく減らせます。特にお子様が実験をする場合には、必ず大人の監督・指導の下、行って下さい。番組の趣旨をご理解の上、以上宜しくお願いします。