|
オフィスビルのエントランスホールに置かれた、ガラス張りの小さなハウス。実はこれ、LEDを使った、植物工場のモデル施設。衛生管理された室内で、植物の生育に必要な環境を人工的にコントロールして野菜などを栽培する農業生産システム。完全閉鎖型で土も使わないため、虫などが付きにくく、農薬も不要だ。 季節や場所を問わず農業ができる植物工場。南極の昭和基地の中にも小さな植物工場があり、観測隊はここで採れた野菜で、不足しがちな栄養を補っている。 一年を通して安心安全の野菜がつくれる植物工場ではあるが、初期の設備投資や光熱費等を中心に、露地栽培に比べかかるコストは多い。それでも現在、全国で50か所以上の植物工場が稼動しており、政府は2009年度に「今後3年間でこれを3倍にする」と発表している。 推進の理由は技術の進化で採算面での見通しが出てきたこと。 「植物工場」自体は80年代からあったものの、当初は、高い熱を出す高圧ナトリウムランプを使っていたため、野菜との距離を1メートル以上とる必要がある上、消費電力も大きくビジネスとしての成立が難しかった。しかし、蛍光灯の進化やLEDの開発によって棚型栽培が確立。省スペース化が進み大量生産が可能となったことで、徐々にコストの問題も解決しつつある。 さらには、安定した環境下で植物の管理を数値化・効率化できることから、農家の高齢化が危惧される中、これまでの経験+勘の農業を誰にでも管理できるよう工業化し、食料自給率向上に貢献する事も狙いだ。 実際に植物工場をたずねてみると驚くのはその生産効率の高さだ。 水耕野菜の開発・販売会社が20年前に建てた研究室をリフォームし、この春、愛知県の弥富市に誕生したばかりの植物工場では、栽培室で五段の棚を使用しており、これだけで単純計算でもふつうの畑の5倍の作付けが可能となる。 さらに収獲までの期間も露地栽培の3分の1程度だという。この企業では高い生産効率を生かし、より付加価値の高い野菜を生産する事で軌道に乗せていきたいとしている。 またこうした植物工場はこれまで施設に合わせてオーダーメードのプラントとして設計されることが多く、設備費用が高くなりがちだった。しかし、もともとハウス栽培などの施設園芸が盛んで、植物工場のハードを開発するノウハウを持つ企業が多いこの地方では、こうした企業が連携して一定の規格で植物工場を商品化。香港など農産物を輸入に頼る海外への売り込みを図っている そんな植物工場で作られた野菜類。 これまでは、食品メーカーやレストランによる自社消費が中心だったが、徐々に私たちの身近にも、その姿を現しつつある。名古屋市緑区にあるのは、ホールから自前の植物工場が見渡せるレストラン。店の料理に使うセリやレタス、食用花など10種類の野菜をこの工場で育てている。料理の注文が入るとシェフが自らこの植物工場で野菜を摘み、採れたてを調理する。来店する客の多くもこの野菜を使った料理が目当てだ。新鮮かつ安心で味も良いと評価も高い。 また、家庭用のミニ植物工場キットも近年相次いで販売されている。「一家に一台植物工場」といった究極の地産池消が実現する日も近い…かもしれない。 ■豊橋サイエンスコア(植物工場モデル施設) 住所) 愛知県豊橋市西幸町 浜地333番地の9 tel) 0532−44−1111
■中部経済産業局 住所) 愛知県名古屋市中区三の丸2丁目5番2号 tel) 052−951−2716 ■M式水耕研究所 住所) 愛知県弥富市坂中地1丁目37番地 tel) 0567-52−2401 ■ECO CAFE KUNIYOSHI 住所) 愛知県名古屋市緑区兵庫1−106 tel) 052−848−8250 ■葉っぱや(葉っぱやガーデンクラブ) tel) 0436−36−8888 キットレンタル料金) 毎月2,480円(初回9,800円) ※苗・肥料・野菜のおまけ付き
|