「生まれ育った故郷に行きたい」
「旅行先で見た壮大な景色が見たい」
「心と体を癒やす温泉に入りたい」
人生の最期を迎えようとしている時、
こうした旅行をかなえようと奮闘する医師がいます。
トラベルドクターの伊藤玲哉さん(32)
医師である伊藤さんが旅行に同行することで、
病気によって旅行を諦めていた
患者さんの願いをかなえます。
この活動のきっかけは、研修医時代。
終末期の患者さんから告げられた最後の願い。
「旅行へ行きたい。」
伊藤さんはこの願いをかなえることができず、
患者さんは病院で最期を迎えました。
後悔と共に浮かんできたのは、
「患者さんのため」と言いながら
自分らしく生きることが実現しづらい、
現在の医療のあり方。
医師である自分が、
諦めていた旅行をかなえる仕組みをつくろうと
動き出しました。
保田 正さん(75)
末期がんで入院中、あと数日の命と告げられ、
残された時間を家で過ごすため退院してきました。
家族旅行はいつも決まって海。
思い出の詰まった海へ、
家族との最後の旅行を願っていました。
伊藤さんは、病状を考慮した移動手段、
車いすで利用できる宿泊先、
旅行先の医療機関との連携など、
準備をすぐに始めます。
旅行に行ける体力を考えると残された時間はわずか。
最後の願いをかなえ、
念願の景色が目の前に広がったとき、
保田さんはどんな表情を見せるのでしょうか。
そして、父の旅行を後押しする家族の存在。
旅行を通して生きる希望を
持ってほしいという願いは、
家族に予想外のものを残すことになりました。