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Interview
“バスケットボール王国・愛知”に、最高の熱狂を!
『AICHI CENTRAL CUP 2024』
2023年ワールドカップに続いて盛り上がりを見せるプロバスケットボールリーグ・B.LEAGUE。愛知県はB1所属のバスケットボールクラブのうち、国内で唯一4クラブを有する聖地だ。この4クラブが愛知No.1を争う初のトーナメント戦『AICHI CENTRAL CUP 2024』が、ドルフィンズアリーナにて9月7日・8日に開催。2日間で17000人超が来場し、愛知勢同士の本気の戦いに、アリーナは熱狂に包まれた。参加したクラブのひとつ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと、55周年企画として立案した中京テレビの企画担当者に話を聞いた。
10月からスタートするシーズンの前哨戦として、日本バスケットボール協会とB.LEAGUEが主催し、各クラブと愛知県バスケットボール協会の協力のもと中京テレビが共催したこの大会は、「つくれば?」をコンセプトワードとして掲げるCTV開局55周年が端緒となったもの。企画に賛同して大会に出場した名古屋ダイヤモンドドルフィンズの梶山ゼネラルマネージャーと張本選手、企画担当者であるCTVビジネスプロデュース局の横尾さんがその裏舞台について語る。
選手・スタッフも待望していた大会
大会前、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの練習場で、ゼネラルマネージャー・梶山信吾さんと選手の張本天傑さんにインタビューを実施。この企画が最初に持ち込まれた際、当事者である2人はどのように感じたのだろうか?
梶山
元々CTVの横尾さんとは関係性がありましたから、お話を伺った時は是非、という感じでした。実は、愛知県の4チームでのトーナメント戦はかねてからの悲願だったのですが、現場主導ではなかなか実現に至らずでした。夢が叶って本当に感激しています。年々、愛知県のファンの熱量が上がってきている体感があります。観戦客数も1試合あたり3000人弱だったのが昨シーズンは5000人を超え、明らかに雰囲気が変わってきたタイミングでの開催となり、まさに好機到来でした。
張本
愛知県全体をバスケ王国として盛り上げていきたいという熱意を感じ、素直に嬉しいです。4チームとも強豪ですから、全試合が決勝戦レベルで白熱すると思います。特に、ドルフィンズの前キャプテンがシーホース三河に移籍したばかりなので、第1戦のドルフィンズvsシーホースはファンにとっても面白いはずです。
梶山
今季のドルフィンズは5人が退団して新たに5人が入団しました。チームの実力値を測るという意味でもベストな時期の大会です。
初のトーナメント戦はシーズン直前の開催。いつもと違う流れの中、調整はどのように行ったのだろうか。
張本
選手も、かなり気合が入っています。僕個人も例年より早くトレーニングに入りましたし、チーム練習も1~2週間前倒しでスタートしました。先日、ピックアップゲームをした際には、ドルフィンズの選手は確実に身体が仕上がっていました! 初めての大会なので、ぜひとも優勝したいです。
ファンにとっては、選手や試合はもちろんのこと、マスコットやチアリーディングも大切な存在だ。ハーフタイムには、マスコット同士の運動会、綱引きやかけっこなどのエンタメも企画、4クラブのチアパフォーマンスが1箇所で観られるのもこの大会のみ。ファンへのホスピタリティも関係者一同で練りあげつつも、真剣勝負の醍醐味を感じられるはずだと語る。
梶山
試合の流れや演出面も含めて、徹底してファン目線を考えたイベントになりました。横尾さんは大会実行も含め、調整が大変だったかもしれませんが(笑)。プレシーズンで、前売り券5000席がほぼ完売するなんて初めてのことです。一方で、エンタメに振り切っているのではなくガチンコ勝負ですから、コアなファンの方々にもきっと楽しんでもらえるはずです。
実はずいぶん前、シーズン中に横尾さんと雑談していたときに「地元4チームでの大会って、どう思います?」と訊ねられたことがあったんです。「それ、本当にやりたいんですよ!」とお答えしたのですが、今思えば、あの時から構想中だったのかもしれません。多くの方の協力があって実現することができ、感無量です。これをきっかけにバスケを面白いと感じてくれる方もいるかもしれませんし、来年以降も続けていくトーナメントとして定着していけばと期待しています。
こうして準備と期待を寄せて迎えた2日間の大会。会場はこの日を心待ちにしたファンで埋め尽くされ、白熱した試合が展開された。張本選手は好アシストを展開するも、名古屋ドルフィンズは3位、三遠ネオフェニックスが優勝という結果となった。コーチや選手は、新加入選手が多く、チームづくりが始まったばかりであるものの、、良い経験になっていると前向きなコメント。それぞれのチームにとっても、レギュラーシーズンの布石として、収穫の多い大会となったようだ。
選手たちにとっても念願だったトーナメント戦の実現。CTVとしても新たな挑戦である今大会、裏方として実現に奔走したCTVビジネスプロデュース局の横尾さんは、この企画をどのように立ち上げたのだろうか。
スポーツのチカラで地域を盛り上げたい!
現局に異動する前は、スポーツ中継や番組制作を行う報道局スポーツ戦略グループに所属していた横尾さん。CTVは名古屋ダイヤモンドドルフィンズのメディアパートナーであることから、コンテンツ制作にも携わっていたという。
横尾
スポーツ中継やスポーツコンテンツ制作を担当するようになって、スポーツには人を熱狂させる力や、人と人とを繋げる力があることを、現場で改めて実感しました。そこで、中京テレビとしてスポーツで東海エリアを盛り上げ、皆が楽しんでもらえるような場を新たに作りたいという思いを温めていました。
イベント・スポーツ事業グループ
担当部長 横尾亮太
横尾
発案のきっかけは、報道局で「愛知の4クラブでリーグやったら面白そう」という声が出たことです。バスケットボールの試合は、玄人好みの部分がありながらも初心者でも楽しめるエンタメ性と演出を持ち合わせています。既にバスケ王国である愛知県を、もっともっと盛り上げたいと、そこから青写真を描いていきました。
とはいっても、最初は手探りで「この企画、本当に喜んでもらえるだろうか」と不安でいっぱいでした。愛知4クラブの一部の方に企画の素案をお話しした際に「やりたい!」という声が返ってきた時は嬉しかったですね。
バスケットボールの公式試合を開催するには、審判やTO (Table Officials:スコアラーやタイムキーパーなどの試合の補佐をする係)の派遣や運営体制の細則がある。4月30日に、4クラブ、B.LEAGUE、愛知県バスケットボール協会が一同に会した際、率直な意見交換と合意を経て、企画は一気に加速していったという。
横尾
パリ五輪後からB.LEAGUE開幕までの限られた期間の中から日時・場所を検討しました。試合の方式からチケット販売、当日の運営まで、細部を具体的に詰めていくことができたのは、ドルフィンズとのこれまでの協力関係が土台にあったからです。決断しなければならないことが山積みでしたが、ドルフィンズ、そして三遠ネオフェニックス、シーホース三河、ファイティングイーグルス名古屋のみなさんと一緒に作り上げていきました。
『AICHI CENTRAL CUP』を愛知県の風物詩に!
B.LEAGUEの試合は、アリーナグルメやハーフタイムショー、エキサイティングな試合演出で知られている。『AICHI CENTRAL CUP』でも、フードトラックをはじめとして、魅力的なコンテンツが満載だ。その根底にあるのは、継続して未来へ繋げていきたいという想いだという。
横尾
企画が採用された以上は、B1愛知4クラブを巻き込む責任、愛知県のバスケットボールファンを巻き込む責任があります。単発ではなく毎年開催できる大会となるよう、先を見据えて心を砕きました。会社からも「チームや選手が来年も参加したいと思ってもらえるように、またファンが来年を楽しみにしてもらえるようにするにはどうすればいいか」を念頭に置くよう強く促されました。また、チケットの売上が好調だったことから「MVP賞を創設して選手に還元することを考えてはどうか」といった案も出るなど、積極的なアシストがあり、嬉しく思いました。
『AICHI』のバスケットボールを誇ってほしい!
2日間での来場者数は1万7000人超。アリーナは、対戦する両愛知勢のブースターで埋まり、その声援合戦は新しい愛知名物とも呼べるものとなった。ファンの皆さんへのおもてなしとしてこだわったのは、「オール愛知」の大会であることを、来場者の皆さんに感じてもらうことだったという。
横尾
普通、Bリーグの試合での応援曲は、ホームクラブが攻撃している間はオフェンス曲、ディフェンスしている間はホームクラブのディフェンス曲が流れます(アウェークラブの曲は流れない)。でもAICHI CENTRAL CUPでは、対戦している両クラブのオフェンス曲を流し、両クラブのファンが応援しやすいように工夫。
また、後半のオフィシャルタイムアウト(90秒)は、試合が決する直前の一番盛り上がるタイミングで、各クラブが盛り上げ曲を流してファンが立ち上がって声援を送る時間ですが、レギュラーシーズンではホームクラブの曲しか流れません。でもこの大会では、対戦する両クラブの盛り上げ曲を45秒ずつ合計90秒に編集して流し、両クラブのファンが最後の声援を送るチャンスを作りました。
また、試合間のイベントでは、「4クラブの選手が勢揃いした記念写真撮影」「4クラブのチア勢揃いの記念写真撮影」を行い、全試合のハーフタイムには4クラブのマスコットによる「AICHIマスコットCENTRAL CUP」を開催。そして大会の締めくくりには、「出場4クラブの選手によるファンへの挨拶」をお願いしました。
すべては大会の「オール愛知」感を醸成し、ファンの皆さんに「愛知県のバスケットボール」をもっと好きになってもらい、もっと熱く応援する気持ちを燃やしてほしい、と考えたために行ったことです。
来場してくれた皆さんが「愛知県のバスケットボール」を誇らしく思ってくれていたら最高です。
横尾さんは、50周年企画でも「潜入!絶滅動物研究所」「情報リテラシー(「池上彰&サンドウィッチマンと考える“フェイクニュース”」)」の2番組を共同で立案して採用された実績がある。最後に、求められる企画を生み出す出発点について訊ねた。
横尾
自分が「この地域にあったらいいな」と思うことと「CTVとしてやる意味・意義・価値がある」ことを掛け合わせて、エリアの視聴者の皆さん、社外のステークホルダーの皆さんとwin-winになれることを考えていった結果です。そのためには、企画を立案する領域に関しての、ある程度のバックグラウンドを知っておくことは必要かもしれません。今回なら、ドルフィンズとのメディアパートナー提携を通じてB. LEAGUEにじっくり携わる期間があったからこその企画でした。
機運の波に乗れたのも幸運でした。『AICHI CENTRAL CUP』を企画化したのはFIBAバスケットボールワールドカップ2023の前で、バスケやB.LEAGUEがここまでの盛り上がりを見せることは想定できていませんでしたが、タイミングは非常に良かったと思います。