“コロナ禍の損失をカバー”町工場が生んだ大ヒット商品 誕生のきっかけは“動物”
町工場から生まれた、大ヒット商品。誕生のきっかけは、ある動物との出会いでした。
愛知県豊川市にある金属加工工場「山本製作所」。訪ねてみると、大ヒット商品の製造で大忙しとなっていました。
「こちらの大きな機械1台とあちらの少し小さい機械2台で生産しています。ずっと生産していても、1日100個ちょっとくらいが限界で、皆さまにご注文いただいているので、いま一生懸命作っています」(田中倫子 社長)
製造が追いつかないという、商品とは…。
「“しっぽ貸し手”です。タッチレスツールとして使っていただいたり、マスクを保管する器具として使っていただけます」(田中社長)
ボタンなどを直接触れずに操作でき、マスクの保管にも役立つ「しっぽ貸し手」。
デザインのヒントになったのは、工場によく顔を出すというネコでした。
アイデアに困ったとき、このネコがふっと現れたのだといいます。
まさに、“ネコの手を借りた”アイデア。
病院や介護施設から注文があるほか、贈り物としても人気です。注文は、海外からもあるといいます。
「月の売り上げとしては過去最高です。コロナの影響があった3~5月は、売り上げは5~8割ぐらい減っていました」(田中社長)
新型コロナで大きく落ち込んだ売り上げを、カバーできるほどの大ヒット。現在、約2か月待ちだそうです。
“タッチレスツール”開発のきっかけは、田中社長の前職にありました。
「就任する前は、総合病院に勤めていました」(田中社長)
工場を継ぐ前の6年間、看護師として病院で働いていたという田中社長。医療従事者の悩みを、なんとか解決したいという思いがありました。
「医療従事者であったときの仲間たちから、“マスクを保管する場所に困る”というリアルな声を拾った。いま自分が製造業としてできることって何なのかなって」(田中社長)
強い思いがあるからこそ、製造にはこだわりました。
素材には、インフルエンザウイルスなどの不活性効果があるとされている「真鍮(しんちゅう)」を使用。
さらに…。
「ステイホームと言われていたので、このネコ、座っているんですよね。ステイホームしています。アーチ型のしっぽは、“鍵しっぽ”といって、みんなに福を運ぶと言われているので、使っていただいている人に少しでも幸せになってもらえたらいいなという思いで(作りました)」(田中社長)
「新しい日常に、福を――」ネコから生まれた大ヒット商品には、強い思いが込められていました。