“学校内のフリースクール”が自分の居場所に 「学校に行きたくても行けない」生徒たちの気持ちにも変化が 愛知・岡崎市
学校に行きたくても行けない。そんな不登校になった生徒たちをサポートするため、意外な場所に居場所を作る取り組みが、愛知県で広がっています。
4月7日、始業式の様子をテレビでみる生徒たち。ソファや床で、リラックスしています。
この場所は、フリースクール。
フリースクールとは、いじめや授業の悩みなどで教室に行きたくても行けないという子どもたちが、代わりに過ごす場所。
個人やNPO法人などが“学校外”で運営することが多いのですが、愛知県岡崎市にあるこちらは、おととし、市が“学校内”に開設した、全国でも珍しい“校内フリースクール”なんです。
では、どうして、校内に開設したのでしょうか。
「実技教科の先生が必ずいる。美術なり、音楽なり、情操教育をサポートしてくれる」(フリースクールの担任 山田義仁 先生)
フリースクールが学校の中にあることで、音楽室や理科室などを使った授業ができるメリットがあるといいます。
そのほかにも、英語など、各教科の先生や担任の先生が生徒の様子を見にくるほか、フリースクールにしたことで、専属の担任や支援員を配置することができ、より手厚いサポートが可能になったといいます。
3月時点で利用していたのは、新3年生と新2年生のあわせて13人。みんな、このクラスに来た事情がありました。
「クラスにいると、ずっと席に座っていないといけない」(利用する男子生徒)
「(スピーチをしたら)『考えてから言えよ』って言われて、グサってきて。誰かにしゃべろうとすると頭が真っ白で、何も分からなくなってしまって」(利用する女子生徒)
近年、急増する不登校。生徒の数が減少しているにもかかわらず、この10年で、不登校の生徒は約1.4倍になっています。
4月から2年生になった実香さんも、小学6年生の時に、学校に通えなくなりました。
当時を知るお母さんは、コロナによる生活の変化が、不登校のきっかけだったと話します。
「みんなマスクして、みんなが同じ顔で、食事中もしゃべっちゃいけないっていうのもあって、なんか『気持ち悪い』って、みんな同じ格好して。ついには教室に入れないってなって、保健室にも行きたくないっていう状況に」(実香さんのお母さん)
通学できない状況は半年ほど続きました。
小学校の先生に相談したところ、進学先の中学校に「F組」と呼ばれる校内フリースクールがあることを知り、入ることを決めたといいます。
所属するクラスに加えて、希望すれば、F組にも在籍することができるんです。
そんなF組には特別なルールがあります。
1つめが時間割。なんと、決まっていません。
この日の4限目。実香さんのクラスは運動場で、レクリエーション。
参加することにした実香さんは、同じF組の仲間を誘います。
実香さん:「行くなら一緒に行くよ?」
F組の仲間:「いや、大丈夫」
実香さん:「行かない?了解」
2つめのルールは、相手に強要しないこと。お互いの気持ちを認め合います。
みんなと一緒に授業が受けたければ、自分の所属するクラスへ行って受けても良し、リモートで参加することも可能です。
クラスを見守る支援員の先生にも、子どもたちを見守るうえで決めたルールがありました。
「『これやったらどう?』と勧めるのではなくて、来てくれるのを待とうかなと」(F組の支援員 入山定之 先生)
F組の目標は、生徒一人一人の居場所を作り、得意なことを伸ばせるようにすること。
この日も、パソコンを使って音楽の先生から作曲を習う生徒もいれば、タブレット端末を使ってイラストを描く生徒も。
「こっちだと過ごしやすい。楽しいことがいろいろありすぎて」(F組の男子生徒)
「ネッ友(ネット上の友人)も不登校。(取り組みが)全国に広がってくれたらいいな」(F組の女子生徒)
昨年度は、3人の生徒が、教室へ戻ることを決めたといいます。
実香さんの気持ちにも変化が生まれていました。
「自分“いてよかったな”って。小6の時、一週間に1回しか(学校に)行ってない。今は、ほぼ毎日来ている」(実香さん)
「心に余裕ができたみたいで、将来の話をすごくするようになりました。未来に対しての希望を言うようになった」と、お母さん。実香さんの変化を感じていました。
自分の居場所を見つけた実香さん、今後の目標があるといいます。
「学校に行けてなかったりするから、今、この経験を生かして、そういう人たちに寄り添えるような先生になりたいなって」(実香さん)
フリースクールを校内に設置する取り組みは、今年度、名古屋市でも行われるなど、徐々に広がりをみせています。