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「設楽ダム」構想から約50年 遠い完成…ダム建設に翻弄された住民の“誰もいないふるさと”への思い 愛知・設楽町

報道局
特集 愛知 2022/05/23 19:00

多目的ダムとして建設が進められている愛知県設楽町の「設楽ダム」。17日、国土交通省は、工期の延長、完成を2034年と公表しました。建設事業の停止、再開、工期の延長…。ダム建設にふりまわされて約50年。ふるさとを離れた住民の思いはー。
 

通行止めの看板の前で、奥を見つめているのは、金田利幸さん。

「向こう側が僕の住んでいた所なんですけども。もう8年前ですね」(金田利幸さん)

この場所を離れた理由。それは、ダム建設に伴い、家屋が水の中へ沈んでしまうからでした。
 

愛知県の北東部に広がる三河山間地域。その中央に位置する人口約4400人の設楽町。

この町に、国が治水、利水のための多目的ダムとして建設を進めているのが「設楽ダム」。
 

ダム建設が公になったのは、今から約50年も前のこと。

最初は、30代から40代の働き盛りの町民の大部分が、ダム建設に反対していました。

ところが、町の主産業の林業が徐々に衰退し、若者は次々と町を出ていったのです。
 

今から20年前、ダムを建設する国土交通省と、水没する地区の住民が、建設に向けて、用地測量の調査を行うことで合意。

その8年後、町と国、県の間で建設に同意する調印式が行われ、巨大ダムは建設に向け、ようやく動き出したのです。
 

ところが、調印式からわずか7か月で、政権交代により、「コンクリートから人へ」という理念のもと、数々の公共事業が廃止、凍結とされ、設楽ダムの建設も事実上ストップ。

先行きは不透明でも、ダムによる水没予定地では、住民の移転が急速に進んでいました。

124世帯が移転するうち、最も水没する家が多いのは、金田さんが区長を務めていた八橋地区。
 

手元には、地区の電話一覧表がありました。

かつて57世帯が名を連ねていましたが、住民が転出するたびに黒インクで消していくと、真っ黒になってしまいました。

「やっぱり生まれた土地がなくなる、地図の上から、この八橋っていう所が消えるっていうことは、言葉で言い表せない。その胸の中のつかえっていうものが、やっぱりあるんだよね」(当時の金田さん)
 

8年前に開かれた八橋の歴史に幕をおろす「閉区式」。

地図から、ふるさとが消えてしまうのです。

住民は、長く住み慣れた地に思いをはせながら、静かに別れを告げました。
 

4年後のダム完成を目指し、工事は順調に進んでいたと誰もが思っていた矢先―。

国土交通省は5月17日、工期を8年延長し、2034年度に完成。さらに、建設費も約800億円増え、総事業費は3200億円になる見通しだと公表したのです。

変更の理由として、新たに地滑り対策や、働き方改革による作業員の労働時間の短縮。さらに、近年の資材高も、総事業費増加に影響したといいます。


ダム完成まで12年。2034年に90歳になる金田さん。

「ほんとはこの八橋で、このきれいな空気で老後を楽しみたいなというような方が、たくさんいたんじゃないかなと思いますけどね。もうやりきれないっていうよりも、もう、あきらめちゃってるほうが、みなさん多いんじゃないですかね」(金田さん)

ダム建設が公になってから約50年。金田さんの住んでいた八橋地区は、今は、もう誰もいないのです。
 

中京テレビ 「キャッチ!」 5月23日放送より

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