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若手“猟師”の本業は“医師” 医療・農作物被害…地域が抱える課題を2つの側面から解決 三重・松阪市

報道局
特集 三重 2021/01/21 10:30

農作物被害への被害が後を絶たない三重県松阪市で、地域を守ろうとする猟師の男性。

実は、男性の本業は猟師ではなく“医師”でした。“医療”と“農作物被害”、2つの側面から地域を支える男性が大切にしていることとは…?命をかみしめ、生と死に向き合い続ける日々を追いました。

良雪雅(りょうせつまさし)さん。松阪市で、知る人ぞ知る若手の猟師です。

猟師は、独学で始めたといいます。

「誰から教わるんですか?」(記者)
「ユーチューブ先生。本当にね、ときどき自分がよく分からなくなります。『俺はなんだっけ?職業…』みたいな」(良雪雅さん)

シカやイノシシによる農作物への被害が深刻な松阪市。相次ぐ被害を受け、良雪さんのもとには捕獲の依頼がやみません。

去年11月。わなを仕掛けに行くという良雪さんに同行しました。

 

イノシシがエサとなるミミズを探すため、耕すように掘り返した跡で、庭が一変していました。

 

まっすぐに伸びた線は、麦畑を踏み荒らしたシカの足跡。生育途中の稲を、我が物顔で食べてしまうのです。

ほかにも、飼い犬がイノシシに足をかまれ骨折。これまでに3回も襲われるなどの被害が。

 

お手製のわなを民家の庭や裏山に仕掛け、毎日見回りを続けています。

別の民家でも真新しいイノシシの痕跡を見つけた良雪さん。しかし、わなを仕掛ける準備の途中で、突然民家に上がり込みました。

「お父さん!どう調子?笑っとるな」(良雪さん)

民家にいたのは、89歳になる草香妙聖さん。脳梗塞によって寝たきりとなり、妻の介護に支えられています。

「お母さんが献身的に介護をされている。お母さんが倒れるとアウトなので」(良雪さん)

草香さん夫婦との付き合いは、猟師としてだけではありません。

良雪さんの本業は、医師なのです。

三重大学を卒業後、東京の病院に勤務。6年前に松阪でクリニックを開業しました。

「お住まいどちらです?シカとかイノシシがよく出るところですか」(良雪さん)
「いえいえ。街中です」(患者)

お医者さんモードのはずですが、ついつい猟師の顔が見え隠れ。

 

良雪さんのクリニックは、休日や夜間でも受診ができ、救急にも対応する全国的に珍しいクリニックです。

「すごい助かりますね。休みの日に。休日が一番病気になったときに困りますものね」(患者)

このクリニック、実は、街の危機を救う切り札となっていました。

クリニックができる前、この地域では夜間や休日に診てもらう場合、救急車を呼ばなければ対応が難しかったといいます。

そのため、軽傷であっても救急車を呼ぶケースもみられ、出動件数はみるみる増加。病院も疲弊していき、地域の課題となっていました。

松阪の救急医療を救うため、市の委託を受けたクリニックが誕生したのです。

「(負担を減らそうと)一番大きく考えていたのは、大きな病院の先生方と救急隊の皆さん。結果的に市民のためにもなると。みなさんにとって良い話かと思って始めた経緯です」(良雪さん)

 

新型コロナの余波は、松阪にも。この日は、2歳の女の子が40度の高熱との電話が。

外には発熱患者専用の窓口を設置。導線を分け車内で検査を行います。

女の子は、子どもによくある突発性の発熱でした。

「発熱の人、もう一人来るみたいです」(看護師)

ほとんどの医療機関が休みのため、発熱患者はここを頼りに駆け込んで来るのです。地域の医療を守るためにも、発熱患者だからといって断ることはしていないといいます。

 

良雪さんが自宅に帰ると、庭で待っていたのは名古屋コーチンや烏骨鶏などの“ニワトリ”。

医師としての緊張感を解きほぐすのは“自然の恵み”だといいます。野菜も自ら育て、食べ物にはほとんど困らないそうです。

「酒とミルクだけですね。自給自足できないものは。いつかは田舎暮らしとかありましたけど。その前に結婚するべきです。どう考えても…」(良雪さん)

 

休みの日には、シカやイノシシの肉を調理。自ら仕留めた命を解体して、おいしくいただくのがモットーです。

「殺して終わりじゃダメなので。どんなものでもおいしくいただくのは大事ですよね。店で買ってきたものではなくて、自分で捕まえてきたものなので、それがどうやって生きていたかも分かるし。それをいただくのは、“感謝”ですよ。本当に“いただきます”。文字通り」(良雪さん)

 

この日向かったのは、“狩猟”ではなく、患者さん宅への訪問診療。

森田恵美子さん。脚のリンパ液の流れが滞る病気で、常に痛みと闘う日々を送っています。

10代から入退院を繰り返すなか、心の支えになっていたのが趣味の手芸でしたが、体の負担にもなるため、「無理せず寝ていればいい」と諭す医師がほとんどだったといいます。

しかし、良雪さんは森田さんの生きがいを尊重しました。

「何回も死にたくなる。でもこれがある、“お花”が。だから私はやれるだけ続ける。たぶん良雪先生がさせてくれる」(森田さん)

良雪さんに深く感謝しているという森田さん。そんな思いを届けたいと、森田さんは作品に思いを込めることにしました。

 

年の瀬が迫ったある日、プレゼントが届きました。

「これもらったんですけど」(良雪さん)
「誰からですか?」(クリニックスタッフ)
「森田さん」(良雪さん)
「すご!これ手作りですか?」(クリニックスタッフ)
「今回はまた力作だった。本当に力作だった」(良雪さん)

手芸ができる喜びと感謝が作品に込められています。

 

良雪さんが猟師になったきっかけ。そこには、ある患者さんの存在があったといいます。

「寝たきりの方だったんですけど、奥さんが一生懸命介護をされていた。その奥さんの唯一の楽しみが畑。それがある日、イノシシに一晩で荒らされてしまった。そのあと、奥さんはうつになってしまって。旦那さんの介護も十分にできない状態になってしまった。そういうときに自分に何ができるかなと思ったときに、これは“イノシシを倒すこと”だなと、“イノシシを捕ること”だなと思いまして」(良雪さん)

生きがいを取り戻してあげることが治療。そう考え、猟師になる決断をした良雪さん。

畑を荒らしたイノシシを捕まえ、その後も猟師を続けてきたのです。

「人間にとって一番大事なのは生きがいで、それをなくして10年長生きするのが大事かというと、僕はそうではないなと思うので。もしそれで少し寿命が縮まることになっても、ご本人さんとご家族さんが納得されればそれでいいかなと」(良雪さん)

医師であり、猟師であるからこそ、自然のようにあるがままに生きることを大切にしたい。命をかみしめ生と死に向き合い続けます。
 

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