2003 1stステージ開幕戦
進化と脆さ 消えぬ「波」の問題 

2002年はJリーグ発足10年目、そしてワールドカップ開催という節目の年だった。そして今年2003年、Jリーグは誕生から第2章を迎えたといってもいいだろう。

新しい幕開け。それを象徴するかのように、王者・ジュビロが、オフに大補強を行った新生岡田マリノスに2対4で完敗。ここ数年続いた「ジュビロ、アントラーズの2強時代」に何やらピリオドが打たれそうな気配が漂ってきた。
  
そして我がグランパス。ホーム瑞穂陸上競技場にエスパルスを迎え撃っての開幕戦に、15548人の観衆が集結した。毎年のように今年のチームも前評判は低くない。ウェズレイ、ヴァスティッチのリーグ屈指の2トップは健在。サンフレッチェ広島から藤本主悦を獲得しトップ下に据えた。山口素の抜けたボランチには2年目の吉村、そして昨年の司令塔・中村直志が控える。3バックのセンターには1対1で抜群の強さを見せるパナディッチ。

ベルデニック体制2年目。
チームコンセプトは「組織的な守備からボールを奪う。取ったボールを素早く藤本、あるいは2トップに当てる。またボールをキープする中で活路を見出していく」
果たしてその浸透度は・・・?
 
結果は2対2の引き分け、勝ち点1。そこにはグランパスの「進化」と「脆さ」、その両面がはっきりと見える結末となった。

 「進化」の象徴・藤本主悦

まずは「進化」。
前半のグランパスはおもしろいようにボールを支配し、そして得点を奪った。その中心にいたのはやはり藤本。右に、左に、前方に。次々に鮮やかなパスを繰り出す。慣れないボランチのポジションにいた中村もはまった。前への飛び出し、後ろから前線へのスルーパス。 昨シーズンのウェズレイ、ヴァスティッチの「個人技」に頼ることの多かった攻撃が見ていて楽しい。 それは結果として前半2得点につながった。

しかし課題も見えた。1点取られ流れを相手に渡してしまった時の「脆さ」。
後半13分、トゥットにオフサイド気味のゴールを決められるとプツリと集中力が切れてしまう。後半14分には前半よりやや下がり目のポジションでグランパス守備陣を翻弄していた安ジョンファンがゴール右隅に豪快なミドルシュート。アッという間に追いつかれてしまった。
その後、原を投入し今シーズンの攻撃バリエーションの1つ、3トップで決勝点を狙うも、エスパルスゴールを割ることはできず。勝ち点3を奪うことはできなかった。

ベルデニックは昨年の最大の問題を「波」だと語っていた。
プレーのクオリティ、モチベーション、チーム内の雰囲気。選手に自信がなく、いずれも高いレベルで保つことができない。
開幕戦でもそれがはっきりと出てしまった。

「進化」と「脆さ」、両面が露になった開幕戦。しかし目指している道は決して間違ってはいない。
試合後、楢崎は「勝つことはできなかったが内容は悪くなかった」と胸を張った。藤本は「やっていてすっごく楽しかった」と笑顔を見せた。

少しずつ「脆さ」を克服していくしか「進化」への道はないのだ。勝利こそが選手たちに自信を与える。「波」が消えるまで、あせらず、じっくりとグランパスを見守っていこう。


取材:五十嵐智明

[2003.3.23]
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