散り始めた桜の中、無残に散った敗戦
―失意の楢崎よ、自分を責めるな
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春休み真っ只中の日曜日。
W杯本番での活躍を期待させる、代表チームのウクライナ戦、ポーランド戦の快勝を受け、
Jリーグへの関心も高まった中で迎えたホームゲーム。
1万人を越えるサポーターたちの前でグランパスは、あまりに”寂しい”負け方をしてしまった。
相手はここまで勝ち星なし、しかも3試合で19失点と守備の崩壊に
苦しんでいるコンサドーレ。
攻撃のバリエーションが増え始めているグランパスにとって
快勝して勢いをつける、またとない相手のはずだった。
実際、前半はほぼ一方的にグランパスが支配した。
守備の意識の高いコンサドーレではあるが
鋭いプレスをかけボールを奪っていくアグレッシブな守備ではなく
あらかじめラインを下げ、人数をかけて網をはっていくような
受身の守備を敷いてきたため
中盤で自由にボールが持てるし、前線の選手も余裕を持って
ポジションを変えながらボールを受けられる。
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戦う姿勢は最後まで見せたが...
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ほとんど思い通りにボールを回してコンサドーレゴールに迫りながら
イージーなシュートミスで得点を奪えない。
優位に立ち続けたはずなのに
なんともいえない苛立ちと喪失感がスタジアムの中をよぎった。
そうした空気を引きずってしまったのだろうか
後半、修正してスピードが上がったコンサドーレに
守備陣の受け渡しが一瞬遅れた。
後半4分、右サイドから質のいいクロスを放り込まれると
FW小島をケアしようとした大森の足にボールが触れオウンゴール。
9分にはかつての盟友小倉のポストプレーにDFが振りきられ
2列目から入ってきた山瀬をフリーにして中央からのミドルシュートを決められる。
23分にはまたも小倉のポストを起点としたプレーにDF陣が混乱し
右サイドがガラ空きになり、フリーで受けた森下に決められ3点目。
それまでの優位がうそのようにたやすくゴールを割られつづけた。
攻撃陣は前半あれだけ攻めながら得点を挙げられなかったことで
集中力が切れ、後半は淡白なプレーを続けてしまい
最後は試合終了まで席に座っているのが苦痛なくらいの惨敗となってしまった。
「最初の失点でDFラインが自信を失ってしまった。
攻めはボールを持ってからのプレーが遅く相手DFの帰る時間を与えてしまい
自分達のDFラインのウラを不用意に空けることにもつながってしまった。
攻めの形は今シーズンで一番よかったのに。
サッカーにはこういうことがある。ここまでの練習がどうというより
こころの問題。アグレッシブさが足りなかった。」
ベルデニック監督の試合後のコメントはまさにその通りで
敗因分析は十分なのだが
プロとして、見ている者のこころに訴える材料が
あまりに乏しい90分という印象がぬぐえないのが寂しかった。
代表での正GK争いが激しさを増す中、21日のウクライナ戦で好セーブを連発し
ポーランド戦での川口のプレーに大いに刺激を受けてチームに戻った楢崎にとって
この敗戦は勢いをそがれる、むなしさを覚える敗戦だった。
「お客さんに入場料を返さなきゃいけない試合でした。」
目指すものが高いからこそ、楢崎の受けた心の傷は大きい。
しかし、これを繰り返さず、前向きな姿勢と
プレーを見せてくれることがプロフェッショナルなのだと信じたい。
取材:大藤晋司
[2002.4.1]
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