ベルデニックサッカー・覚醒の時は来た
―アウェイで清水に快勝―
|
遂に、殻を破った。 1週間前、惨敗を喫したチームと同じメンバーとは思えない 見違えるようなサッカーが敵地・日本平で展開された。
エスパルスといえば元・現日本代表選手の宝庫。 しかも今最も注目を集めている三都主アレサンドロ、市川大祐という 国内随一のサイドアタッカーを擁している。
もともとサイドからの攻撃を苦手とする傾向の強い3バックの守備、 しかも1stステージ開幕後急遽導入したシステムだけに 試合前はこの強力なサイド攻撃を持つエスパルスを封じることができるのか 大きな不安があった。
攻撃面にしても、何度も決定機を迎えながら、ことごとく決められず自らペースを手放してしまった前節の様子が頭に残っているだけに、組織的なエスパルスの守備を崩せるのかという思いは正直大きかった。
しかし、フタを開けてみると、日本平のピッチ上ではグランパスの見事なサッカーが終始披露された。
|

”マタドール(闘牛士)、遂に爆発!”
|
サイド攻撃が怖いのなら、そうなる前に攻撃の目を摘み取ってしまえとばかり、前線からの積極的なプレッシングで自由な球出しを許さず、逆に高い位置でボールを奪ってからは、中盤が流動的にポジションチェンジをして相手を混乱に陥れる本来の攻めでエスパルスを圧倒していく。
前節の惨敗、更には敵地、という条件下で守備的に戦うかに思われたが、
「こういうときだからこそ本来の自分達のやるべきサッカーを やらなくては駄目だ。攻撃的に行こう」
清水戦に向けての練習の中で選手達が緊急ミーティングを行い、敢えて攻める姿勢を前面に出したことが
ベルデニック監督が求め続けながら形に表れなかったサッカーを表現することにつながった。
「戦術は大事だ。しかしサッカーはそれだけでは勝てない。
それぞれの局面で、自分がやると決めたプレーを思い切ってやることが大切。
これまでは戦術通りにやらなければということが頭にありすぎて、個人の判断と技術が発揮されていなかった。今日はこれまでやり続けていたことを選手達が思い切ってやってくれた。
結果もうれしいが、ここまでの私達のサッカーが間違っていなかったことが証明されたことが 今後の自信につながる。」
指揮官はステージ始まって以来最高の喜びの表情を見せた。
最高の貢献者はもちろんハットトリックを決めたマルセロ。これまでは同じバイーア州サルバドール出身の先輩ウエズレイばかりが目立ち、どちらかというと敗戦の”戦犯”扱いされることさえあった。
ベルデニックは大きな期待を寄せて起用し続けてきたが、スタメン落ちさえの危機が囁かれていた。
本人も自覚をしていたようで、まさにこの試合はマルセロ自身にとって正念場であり、
起死回生の場となった。
もともと技術は高い。しかし”ピチブー(猛犬)”のニックネーム通りの貪欲さでゴールを狙う
ウェズレイと比べると、どうしても淡白で勝負弱いという印象がついて回った。
大きな危機感が本来の繊細さを兼ね備えたボールタッチに、ゴール前の豪快さを蘇らせたのだ。
「やるべきサッカーができるまでには時間はかかるだろう。しかし、できるようになればよい結果は必ずついてくるはずだ。」
サッカーの質に対しては選手も、指揮官も開幕前から自信を持っていた。
辛抱の時を経て、いよいよそのサッカーの本領が発揮されるときがやってきた。
次節は豊田スタジアムでのレイソル戦。ホームの大観衆の前で
そのサッカーの強さ、面白さを、是非思う存分見せてほしい。
取材:大藤晋司
[2002.4.8]
|