未完成のままリーグは中断・楢崎はW杯へ
―世界の祭典に向かう思い―
 ファーストステージは第7節をもってワールドカップのため中断。  グランパスはこの7試合を3勝4敗で終えた。 5節で清水に快勝した勢いは6節の柏戦でも持続し 2-0と2試合連続完封・そして豊田スタジアム初勝利をあげた。

 続く6節、20日の京都戦。3連勝で勝ち越して中断を迎えたかったが 良くないときのグランパスが顔を見せ0-1と星を落とした。

 この7試合を振り返えると、「切り札」といわれたベルデニック監督の サッカーの「芽生え」は見えたが、「花を咲かせる」ことはこれから ということになるだろう。

 はまったときの流れるような攻撃と安定した守備は 磐田や横浜といったこの7試合を通して好調だったチームに ひけをとらない。
しかし、そうした質の高いサッカーの持続という意味で 課題が残された。
1試合・90分の中でも、小気味いいプレーの時間と手詰まりになる時間が はっきりしすぎたし、
いい内容を見せた次の試合にその良さが持続しないということもあった。
全体を通して、調子の波の大きさが目立ち、サポーターも 苛立ちを隠せない7試合というところではないだろうか。

「私のサッカーが浸透し、選手が本当に力を出すには時間がかかる。方向性は間違っていないと確信しているのでもう少し長い目で見て欲しい。」

 ベルデニック監督はことあるごとにこう言ってきたが、この言葉は的を得ているし、選手達も同じ思いで子の3ヶ月を過ごしてきた。期待感はある。しかし、実現までもう少し、産みの苦しみが必要というところだろう。
 中断期間はチームにとって最も欲しかった、熟成の為に必要な時間だ。おそらく、1日1日、濃密なトレーニングが展開されるだろう。
 そしてこの中断期間に、サッカープレーヤーとして最高の栄誉をつかむときを迎えるのが、GK楢崎だ。
 最終メンバーの発表は来月21日だが、日本代表としてW杯の舞台に臨むことは間違いないところ。問題は正GKとして、世界最高峰の大会のピッチに立てるかどうかだ。  今年に入ってからのプレーの安定感は群を抜いている。川口がイングランドから本格合流しても、内容で劣るプレーは間違いなくすることはない。
 17日のコスタリカ戦、フィールドプレーヤー全体のパフォーマンスが低い中で、楢崎のプレーの質の高さはひときわ目だった。圧巻は後半、先制PKを許す大ピンチを救ったシーン。中央へのキックに対し、これ以上ないという反応を見せてゴールを許さなかった。


「最後までキッカーの軸足の動きを見ることができた。運?自分としては、いい集中ができた結果だと分析している。」

 試合後の楢崎は充実した表情でそう話した。「集中力」そう、この言葉こそが今年の楢崎のプレーを端的に表現している。そしてそれは、苦い思い出となった去年の出来事をバネにしてきたという、強い自負に裏付けられたものだ。
 去年3月、フランス戦でイージーミスで失点して以来、楢崎に最大の持ち味である安定感に軋みが生じていた。リーグ戦でのパフォーマンスも落ち、とうとう楢崎らしさをピッチで表現しきれないままで2002年を迎えることに、トッププレーヤーとしての意地の炎は燃え上がっていたはずだ。


    「ボクは変わりませんよ。いつも通りのことをやるだけです」

 常々同じ言葉を残してきた楢崎だったが、それもまた、言葉ではなくプレーで自分の誇りをとりもどしてやるという、静かに燃える男の意地の表れだったろう。かたくなに己の道を貫く姿勢で本来の姿を取り戻した、いや、これまで以上のプレーを見せる楢崎は、自分に対する確固たる自負を抱いているはずだ。

 世界最高の祭典、ワールドカップ。その魅力を享受する喜びと、その舞台に向かう誇り高き男達の姿を胸に刻む時間が迫ってきた。楢崎がそのピッチで、日本のゴールの前に立つときを確信し、その日を迎えたいと思う。


取材:大藤晋司

[2002.4.22]

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