悪夢を思い出させる完敗
―ナビスコ杯リーグ戦初戦・レッズに”飲み込まれた”―
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リーグ戦は世界の祭典・ワールドカップのため一時”休戦”。 しかしグランパスにとってこの2ヶ月は「空白期間」ではない。 ベルデニック監督にも、その元で戦う選手達にも欲しかった、 成熟のための貴重な時間である。
日本代表の最終合宿・そして国内最終テストの期間を利用した 今回のナビスコカップグループリーグは 強行日程(2週間で6試合)の中で、1歩でも2歩でも進化への足跡を サポーターの前に示し、そしてもちろん 2位以内を確保し決勝トーナメント進出という結果も 残さなければならないものだ。 少なくとも、退化している時間はないはずだ。
しかし、そのグループリーグ最初の試合は 「退化」の2文字が多くのサポーターの頭をよぎったことだろう。 0−2というスコア以上に、レッズに対して 攻守において完全に屈してしまった試合だった。
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見えかけていた”らしさ”は全く出ず…。
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リーグ戦中断前に、一応の安定感を確保した3バックディフェンスは トゥット、エメルソンというレッズ自慢の”高速ドリブラーコンビ” の前に無残に切り裂かれた。
前半9分という早い時間に、トゥットに真正面からのドリブル突破に 3人のDFが次々と置き去りにされ、その右で全くのフリーになっていた エメルソンがパスを受け、楽々と先制ゴールを許す。
この試合の最大の課題であったはずの、レッズのブラジルコンビ対策が 実にあっけなく打ち破られた瞬間だった。
圧倒的な個人技を武器に、様々な仕掛けをするこの二人をどう抑えるか それが「進化」の証明になるはずだった。
しかし実際には、作りかけていた組織としてのまとまり、落ち着きが完全に破壊された失点となった。
失点したという事実以上に、これまで少しづつ積み上げてきた積み木を真っ向から崩されたような衝撃が走る。
ならば、攻撃面での積み木に上乗せをすればいい。
多彩なポジションチェンジとタイミングのいい球出しの連続で相手DFを翻弄していく攻撃パターンは、 レッズの攻めより十分バリエーションに富んでいるはずだった。
だが、中盤深い所でボールの流れが大きく澱んでしまい、出口を求めて後方やスペースのないサイド、無理なセンタリングへと”さまよう”シーンが続く。ボールのないときのポジショニングの不正確さに単純なパスミスが重なり、レッズに守りやすさを提供してしまった。
PKを本田がストップ、更にポストに救われるなどで前半を0−1で折り返した後半、エメルソンが11分に退場してここからの巻き返しが期待されたが、数的優位をつかんだにも関わらずボールの流れは相変わらずスムーズに行かない。そうしているうちに15分には山田のロングスローにニアポストで合わせたトゥットにまたDF3人が誘い込まれ、バックヘッドで中央にこぼれたボールを福田に決められ2点目を許す。GKを含め6人がこのプレーで振りきられていた。
その後攻撃は更に単調さを増し、ほとんど見せ場のないままタイムアップ。レッズサポーターの咆哮のような歓喜の声だけがこだましたスタジアムの雰囲気は、去年12月の天皇杯3回戦、JFLの佐川急便に0−4となすすべなく敗れ去ったときの喪失感に包まれていた。「このままでは恐ろしいことになる。」単に負けて残念という気持ちにとどまらない、未来に対する恐怖にも似た失望。あのときに感じた、そして2度と感じたくなかった悪夢が、また蘇ってしまった。
ただ、あの試合で2001年が終わってしまった時とは違う救いもある。グループリーグだからたて続けに試合があり、そこから立てなおしていくことが可能であるということと、ケガから復帰し、山口が今季初出場を果たしたことだ。経験豊富な山口の復帰は、嫌な連鎖反応を必ず断ち切るはずである。次の試合こそが「1歩づつの進化」を示す正念場となる。
取材:大藤晋司
[2002.4.28]
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