優勝の”関門”突破へ注目の序盤
―問われる「総合力」、深まる自信―

  優勝候補のダークホース、いやジュビロの完全優勝阻止の有力の”対抗馬”という前評判の中で始まった2ndステージ、グランパスは初戦エスパルスには圧勝、2戦目レイソルには乱戦の末引き分けというスタートを切った。 エスパルス戦で見せた攻守のスキのなさからすると、降格争いに顔をのぞかせつつあるレイソルに勝てなかったことを「不安材料」とみる声もある。しかし試合内容を検証すると、優勝という大きな果実を実らせるために”絶対的に必要な要素”が見えた2試合だった。  
  過去優勝を果たしてきたチームに必ず存在した絶対に必要な要素、それは「軸になるエースの選手がいない時にチーム力を落とさない層の厚さ」である。リーグ戦を闘う上で常にベストメンバーで臨めることはありえない。ケガ、出場停止、代表への召集、様々な要素で選手がピッチに立てない事態が起きる。チームの要の選手ほどそういう状況になりやすい。その時力がガクリと落ちてしまうチームは勝ち点を伸ばせない。ベストの布陣を敷けない事態の時に力が落ちない選手層、戦術の徹底がなされているチームこそ、頂点を極めることができるのだ。

 2ndステージでグランパスが優勝候補に挙げられる理由は、「リーグNo.1の2トップ」といわれるウェズレイ、ヴァスティッチの存在だ。2人のコンビが見せる圧倒的な攻撃力、そしてそこから生み出される攻守のリズム、それが他チームにとって最大の脅威となっている。そして裏を返せば、この二人がいない時、それがグランパスにとって最大の課題ともいえるのだ。

 レイソル戦ではその時が早くも第2節という早い段階で、しかも非常に厳しい状態で表れたのだ。ヴァスティッチは母国オーストリア代表に召集され不在という条件でのキックオフ。そして先制された後の前半12分、ウェズレイがレッドカードで一発退場。1点のビハインド、エースの不在、10人での闘いという3重苦を、80分余りの時間余儀なくされたのだ。

 だが、ここからが”候補”に選ばれしチームの真骨頂だった。レイソルに主導権を握られるが、パナディッチを中心とした守備が冷静に対応し追加点を与えずにしのいでいくと、大物ルーキーとして期待されて入団以来3年、結果が残せず苦しんでいたFW原が前半34分に登場。後半開始早々、レイソルディフェンスの一瞬のエアポケットを逃さずにスペースに入りこんでヘッドで同点にした。 エースの2人がいない中、きっちり崩して点をとるのは難しい。ならば相手のスキをついたプレーをしよう、代わった選手のみならず全員がやるべきことを理解していたことで生まれた同点ゴールだった。

 結局はリーグ史上最多の4人の退場者を出した荒れたゲームとなり、8人になったレイソルを10人のグランパスがしとめきれずに引き分けになった試合となったが、この一戦の意味は勝ち点1をとったという以上に大きいものだった。「ウェズレイ、ヴァスティッチがいなくても、自分達はやれる。」という自らへの自信と、「あの2人がいなくても、グランパスはいいサッカーをやってくる」という脅威を相手に与えることができたのだ。特に原をはじめとするベンチ組の自信は大きい。実戦の中で練習の成果を出す機会が少ない選手達が、練習の方向性が間違っていないこと、自分のやってきたことに間違いがなかったことを知ったことで、さらにチームの成熟が進んでいく。一人でもそういう選手がチームにいると、他の選手の刺激のレベルがぐっと上がっていき、練習の密度が飛躍的に上がるからだ。鹿島、磐田など、常勝といわれるチームに共通して見られる傾向だ。

 3節位市原戦はウェズレイが出場停止、ヴァスティッチの代表召集による不在は今後も2〜3試合はある。2人の不在を虎視眈々と狙うほどのサブの選手達の成熟の一端がのぞいた今、グランパスのリーグ初制覇の可能性はさらに期待できる状況になっているといえるだろう。

取材:大藤晋司

[2002.9.13]
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