「精神力の弱さが最大の課題だった」
―チームリーダー岡山、第2ステージを回顧―

 
 開幕前、かつてないほど膨らんだリーグ初優勝への期待。
それがなぜ、チーム史上ワーストとなる、13位という結果となってしまったのか。
 天国から地獄へ突き落とされた激動の2002年第2ステージ、チームの中で何が起き、何が変わっていったのだろうか。
 92年グランパス入団。Jリーグのスタートからの全てを知る、唯一のチーム生え抜き選手、岡山哲也が、その真実を語った。

□第1ステージ3位、第2ステージ13位で2002年のリーグ戦を終えた。この結果をどう受け止めているか。

 第1ステージ3位というのは、過去に何度もそれぐらいの成績を残しているから、僕から見れば“普通”の結果だと思う。でも第2ステージは非常にショックです。
第1ステージの後半はずっと連勝して(6連勝)、ほとんど間を置かずに第2ステージに入る状況で、第1ステージよりいい成績を残せる、初めてリーグ優勝できる、という手応えがとても強かったので、そんな気持ちでステージに入った分、結果が過去最悪のものになったというのは、ギャップが大きい分ショックが大きいです。そして改めて“優勝するって難しいんだな”という思いを強く持ってますね。

□第2ステージは開幕前から周囲からも優勝候補と言われていたが、開幕当初はこれまでとは違った?

 特別にいつものステージ開幕とは違っていなかったと思いますよ。勢いというのはあったと思うけどね。最初の試合(第1節・清水戦)にいい形で勝って、第2節(柏戦)はピチブー(ウエズレイ)が早い時間で退場になって、10人になったのに同点に追いついて引き分けた。連勝は止まったけど(7連勝)悪い引き分けじゃなかった。第3節(市原戦)にも勝って、あれで暫定だけど首位に立ったわけだし。

□第2ステージの最大のカギになった試合は?

 それは間違いなく、第4節のヴィッセル神戸戦ですね。(首位に立つ経験をした直後の9月18日、アウェーでJ2降格の危機にあった神戸に0−2で敗戦)

□その理由は?

 グランパスというチームが持っている悪いクセが出た試合でした。毎年必ずあるんです。どこかで力が抜けてしまうというか、チームが立ち止まってしまうということが。それがあの試合には出た。だから内容的にもグランパスのサッカーが全くできず、完璧にヴィッセルにやられてしまった。そこから歯車が一気に狂ってしまったと思います。

□そこから4連敗して優勝戦線から脱落してしまったが、そのときのチーム状態は?

 1敗したときはそんなに悪い状態ではなかったと思うんですが、次(G大阪)に負け、また次(鹿島)に負けと重なっていって、練習でも雰囲気がなくなってしまって、自信がないまま試合をこなしていくような感じになってしまった。全体的に、動きに余裕がなくなったというか、いい時に通っていたパスが通らなくなったりすると、動きそのものがいいときのものではなくなっていってしまった。自分たちはよくしようとは思ってるんですよ。でもそういう思いとは裏腹に、うまく噛み合わなくなっていった、という感じでした。


□終わってみればチーム史上ワーストの13位でステージが終わりましたが、一番の課題と思ったことは何だったのか?

 これは、やっぱり精神面ですね。それは本当に強く思います。
 振り返ってみると、転機となった神戸戦、あの試合に臨む時にそれを感じました。
 正直なところ、チーム全体に、首位に立って、勢いも感じてて、次はJ2降格の危機に立っている不振の神戸、というところで、チームの中に一息つくような雰囲気ができていた。あそこで更に上を目指していく強さ、というのが必要なんだと思いました。「もっと勝つぞ、相手がどこでも自分たちの力を100%出して、叩きのめすぞ」という、激しさというか、勝利への欲、強い気持ち、というんですかね、そういう気持ちを切らさないチームが優勝することができるんだ、と思います。
 そういうふうに、みんなが自分たちを見つめなおすような、気持ちが強く持てるようなきっかけを、僕とか、代表でいろんな経験しているナラ(楢崎)とか、モトさん(山口素)とか、いや、そうした選手だけじゃなく、誰でもいいから、していけばよかった、そういうチームの状態に気付くべきだった、ということは僕の反省でもあるし、チームとしての課題だな、とは感じますね、強く。


□途中からベルデニック監督は若手中心のメンバーで、将来を見据えた戦いに切り替えたが、収穫はあったか

  まず、若い選手のモチベーションは上がりましたね。
 それは、試合に出ている選手だけでなく、ちょっとしか試合に出ない、あるいはほとんどトップの試合に関係ない選手でも、同年代の選手が試合に出て、評価を上げれば、励みになるじゃないですか。
 あまり言われないけど、うちの若い選手は、みんな能力は高いんですよ。本当に上手い選手ばかりなんです。チャンスがなかなかなかっただけで、実力はみんな持ってる。そういう選手が試合に出て自信をつけたというのは今後にすごく大きい財産になると思いますね。
 それと、チームが活性化されましたよね。若い選手が出てくれば、僕らだっておちおちしていられなくなる。今まで以上のものを見せなきゃ、若手にとって代わられる、そういう危機感というものが、チームに活気をもたらす。そういうものが、今までチームに足りなかった「精神的な強さ、激しさ」につながっていくんじゃないかな、という感じは持っています。
 いい方向に行ってると思うし、光は見えている、と思いますよ。


□グランパス唯一のJリーグ発足時からの生え抜き選手として、ますます責任の大きさを感じているのでは。

  それはもう、生え抜き選手が僕だけになったときから、チームに対する愛情は人一倍強いと自負しているし、入団11年目の今年と、12年目の来年の責任の差、というものも強く感じてます。
 改めて、サポーターの皆さんに言いたいのは、僕達チーム全員、リーグ優勝したいという気持ちは強くもっているんです。
 それを達成するには、今まで以上に厳しいこと、激しいことを乗り越えていかなきゃいけないと思っています。
 サポーターの皆さんとともに、その厳しさ、激しさを乗り越えて、喜びを分かちあいたいと思っています。ともに闘っていきましょう。



 「精神的な弱さ」言葉にすれば簡単だが、目に見えないものだけにそれを克服するのは極めて難しい。山口素弘がチームを去った今、真のチームリーダーとして、岡山はこの大きな課題に挑んでいくことになる。  
取材:大藤晋司

[2002.12.12]
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