稲見駅長の鉄道だよ人生は!!

稲見眞一

開館50周年を迎えた横浜市電保存館(2)運転士さんの座る椅子の話し。

住宅の1階にある横浜市電保存館。

横浜市営バス滝頭営業所に隣接というか、もともとは横浜市電の滝頭車庫・滝頭車両工場跡にこの保存館があります。

館に入ってまず出迎えてくれるのは500型523号。

1928(昭和3)年製造の電車。床張りは当時のことなので勿論「木」。「床」はまだれ(部首)の中が「木」なので、文字通りということになります。

照明のデザインが、レトロ感満載でほれぼれします。

今時の「通勤電車」では、ここまで凝った形の照明カバーはまず見かけません。

背ずりの板も、まあ座り心地が良いかと問われれば、「まあね」となりますが、昭和初期の雰囲気を味わうには必要なアイテムです。

ところでこの写真を撮っていて気になったのが左の座席下の小さなアーチ。

車輪の出っ張りのようですが、こうした構造を見たのは初めて。

単車なので、車高を低くするための構造として取り入れることは可能と言えば可能。但し、それが正解かどうかが不明。

(敷石も良い感じ)

1600型1601号。

昭和の市電そのもの。

この電車で代表しますが、どの電車も運転台がとにかく狭い。

椅子に座ると、膝を真っ直ぐ前に出せません。足を左右に思いっきり広げてやっとこさ。

1600型に当初から椅子があったかどうか分かりませんが、名古屋市電の運転台に椅子がなかった時代の記憶が私にはあります。

※写真は1300型。

ところで展示車両は「花電車」を除き、車内に入れます。

車内も美しく整備されており、椅子にも「へたり」を感じません。

そして座ってみれば…。想像以上に柔らかい感触で、私を包み込んでくれます。目を閉じれば甘酸っぱい青春の思い出。

だけではなく、昭和の情景が次から次へと浮かんでは消えていきます。

久しぶりにレトロでんしゃ館に行ってみようかと思った次第。

地味で、規模もそれほど大きくはありません。でも展示は見応えがあります。

館のある場所はJR根岸線根岸駅からバスで約10分。それが私にとって、この館への訪問に際しての最大のハードルでした。ただ今回、実際に来て分かったのはバスの本数が多いこと。ハードルは私の幻想でした。やはり現場百回。もっとも100回は行きませんが、出かけてみないと分からないことは多々あります。市電好きと自称しているにも関わらず、これまで来たことがなかったことを反省。

(名古屋市電の運転士さん用の椅子)

「名古屋市電(中)(RM LIBRARY 171) 」ネコ・パブリッシング (2013/10/21)の著者:服部重敬氏に教えて頂きました。

同書17ページに記載があり、製造時から椅子が取り付けられたのは2000型(1956年12月~)からとのこと。なおそれ以前に製造された車両では、ワンマン化の際に取り付けられたのではないかとご教示頂きました。服部氏に感謝です。

因みに車掌さんがいた時代を知らない世代の方は、そもそも椅子の無い電車があったとは知らなかったと驚いていました。

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