名古屋市の市営交通100年の歴史を纏めた「市営百年史」が、名古屋市交通局から発行されました。
名古屋市交通局発行と言うことで、その中身は、今後正しい歴史(いわゆる正史)として名古屋市として記録・保存されることとなり、私たちが何か名古屋市交通局の歴史を書く際に、一番信頼できる情報としてこれを参照することとなります。
この百年史の編纂にあたり、NPO法人名古屋レール・アーカイブスでも協力をさせて頂きました。
(それもあって一冊、献本頂いています)
参考までにこのページの写真は、ほぼNPO法人名古屋レール・アーカイブス提供です。
写真だけでは無く、こうした資料も提供しています。
上段の片道乗車券は、NPO法人名古屋レール・アーカイブスの会員さんの提供です。
ところでこうして書いていると、名古屋市交通局ではどうしてこれらを所蔵していないのでしょう?とか疑問を持つ方もおられると思います。
実のところ名古屋市交通局に限らない話しですが、簡単に言えば、「今後使用しないものは、残せていない。」に尽きます。
会社の歴史の残し方は大変難しく、例えば中京テレビでも、撮影した映像を全て残しているかと言えば、そんなことはありません。保管場所のスペースに限界があることから、取捨選択を行っています。
映像だけではなく、例えば取材がフィルムだった時代のカメラは数台あるものの、編集するために使っていた機材は残せていません。
そこで存在感を示すのが、市井(しせい)の趣味者の力です。特に交通関係は、趣味者が多く、また研究者もいます。そうした方の協力もあって今回の「百年史」が成り立っていると言っても過言ではありません。もう一方で、そうした方達の力を借りてでも、「正しい歴史」を後世に伝えようとする名古屋市交通局の姿勢も評価されるべきだと考えます。
(補足)
名古屋市交通局に限らず、「残せていない」だけではなく「あるはずだけど見つけられなかった」も、よくある話です。と書くと、管理が行き届いていないとかなるかも知れませんが、今回のような「正史」の編纂がなければ、特に使う用途がないものは、致し方ないと思います。
この大正期の乗車券は、下の往復乗車券とセットと言っても良いので、きっと残っているはずということで、捜したけれど結局見つからなかったと名古屋市交通局の職員の方にお聞きました。私の勘では、いつかどこかの段階で、思いがけず見つかるような気がしています。
本文の最終ページ。その前後を合わせて1000ページに及ぶ大作です。
今回、この百年史は300部が印刷され、200部が名古屋市交通局内での保存と関係先への寄贈分。そして100部が一般発売されると聞いています。(販売方法は聞いていません)
随分少ないなあと思っていたら、おって名古屋市交通局のウェブサイトでの全文掲載が決まっているとのこと。こうした記録は、人の目に触れてこそ価値があるものと思います。今からその日が楽しみな私です。
ところで百年史の前の「正史」はいつ発行されたのだろうと思ったら、何と50年前の「市営五十年史」でした。
達筆な「市営五十年史」の文字。
当時の杉戸清市長の揮毫(きごう)によるものでした。
さて50年の空白を埋め、100年の歴史を改めて一から掘り起こすこととなったこの百年史。最後に編集を担当された皆さんに、鉄道を愛する者としてお礼を申し上げます。ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。