稲見駅長の鉄道だよ人生は!!

稲見眞一

名古屋の鉄道136年史(昭和戦前編18)平成・令和の笹島駅。

笹島駅は昭和61年(1986年)に廃止となり、その後整地されて「ささしまライブ24」として大規模再開発されました。

中京テレビでも平成28年(2016年)11月にこの地に移転し、今に至っています。

個人的には、入社した会社がよもや移転、しかも鉄道に縁の深い笹島エリアに移転するとは思ってもみませんでした。

その敷地の一角に、この地にかつて「笹島駅」があったことを伝える展示があります。

一本の古いレール。しかも相当の年代物です。

製造されたのは1887年(明治20年)。

さて時は平成26年(2014年)1月8日。場所は今の中京テレビがある場所。建設工事が始まったのは知っていましたが、この前年の年末に新社屋建設の担当者から「基礎工事を行うべく掘削をしていたら古いレールが出てきたので、歴史的な価値があるかどうかを調べて欲しい。もし価値があれば一部でも残すことを検討したい。」との連絡があり、産業遺産に詳しい『中部産業遺産研究会』の方や古レールの研究をされている方達と出向きました。

そこで分かったのはまずこれがホーム上屋の基礎であると言うこと。

現役を退いたレールが建物の基礎に使われた事例は、当時私が知らなかっただけで、例えば大正6年(1917年)に完成した三越大阪店(大阪市、なお閉店している)を始め、特段珍しいことではないと聞きました。ただレールの製造年代とメーカーなどが分かれば別で、それにより産業遺産としての価値が生まれるのだそうです。因みに三越大阪店の基礎に使われたレールは極めて珍しいものとのことで、産業遺産学会の推薦産業遺産に認定されています。

この段階で、明治20年(1887年)のイギリス/キャンメル社製と特定でき、最終的には本稿、冒頭の形で保存することが出来ました。

これはJR貨物名古屋貨物ターミナル駅/駅長室に保存の明治18年(1885年)、イギリス/キャンメル社製のレール。このレールは笹島駅のホーム上屋で使用されていたもので、レールの台帳から武豊線(明治19年/1886年3月1日開通)で使用されていたことが特定されています。それを含め笹島駅のホーム上屋の基礎ですが、これも武豊線で使用されたレールであることが分っており、中京テレビの本社建設工事現場から出てきたものも同様、つまり武豊線で使用されていたという結論が出されました。なお明治20年(1887年)は武豊線開通後ですが、本線の拡充や側線の整備があったと思われるので、武豊線以外での使用ということは考えなくても良いとのことでした。

明治19年に始まった愛知の鉄道の歴史、また昭和12年に始まった笹島駅の歴史は令和の今も中京テレビで続いているのです。

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