声なき声に、耳をすませる。「なくしたい、性暴力」中京テレビ報道局声なき声に、耳をすませる。「なくしたい、性暴力」中京テレビ報道局

“性犯罪者にGPS”の是非は 元受刑者が語る「絶対次も(性犯罪を)しますと言い切る人もいます」

2020年6月24日

政府、性犯罪者への「GPS装着義務化」を検討課題に

6月11日、政府が「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を決定しました。「性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる行為であり、心身に長期に渡る深刻な影響を及ぼす」とし、① 刑事法の整備、② 再犯防止策の更なる充実、③ 被害申告や相談の環境整備、④ 手厚い被害者支援の確立、⑤ 教育啓発活動による社会の意識改革と暴力予防、などの検討を進めることを定めています。橋本聖子・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)はこの方針についてのメッセージで、「政府としての決意と方針を示す、最初の一歩」と宣言しています。

この方針で注目されるのが、仮釈放中や執行猶予中の性犯罪者の再犯防止のために、「GPS(全地球測位システム)機器の装着を義務づけることを検討」するという一文です。2年程度を目途に、海外の法制度・運用などを把握し、それを踏まえ必要な検討を行うとしています。

アメリカや韓国では、性犯罪の常習者や前歴者にGPSの装着を義務化しています。韓国では、義務化により再犯率が8分の1程度に下がったというデータも。

菅官房長官は、「プライバシー権を侵害することとの関係で課題を指摘する声もある一方、諸外国では同様の制度を導入しており、実際に成果をあげている例もある」と話し、法務省での検討を促しました。

果たして、“GPS装着義務化”は再犯防止につながるのでしょうか。性犯罪を繰り返した元受刑者の声から、その可能性を考えます。

元受刑者「何回しても一緒みたいな感じになって、罪悪感がなくなる」

取材に応じたのは、39歳の男性。あわせて13年近くを刑務所で過ごし、自宅へ戻ってきたのはおよそ3ヶ月前今年の3月でした。

「(刑務所に)2回入りました。強制わいせつ致傷罪。酒をやめられなくて、毎晩飲み歩いていたんですけど、女の人が歩いていると、車に引き連れてわいせつな行為をする。1回(犯行を)してしまうとストッパーが切れたみたいに、何回しても一緒みたいな感じになって、罪悪感がなくなる」(元受刑者)

男性は、およそ約15年前に強制わいせつ致傷の罪で5年間服役。そして出所から1年後、再び深夜に女性を襲い、今度は8年間服役したのです。

「反省していなかった。最初の事件のとき、何回かばれずにやれた。今回もいけるだろうって。泣き叫ばれたときにやっと気づく。性犯罪をする人は、(犯罪行為中) 自分が誰かも分からないほど気が狂ってるような精神状態」(元受刑者)

現在、性犯罪で服役したすべての?受刑者は、法務省の特別な治療プログラム「(プログラム名)」を受けることになっています。しかし、男性が刑務所内で耳にした、受刑者同士の性犯罪についての会話は、その効果を疑わせるものでした。

「女性をどう思っているかの話題は(受刑者同士で)出ました。(性の)道具という人もいれば、自分はもう更生できないという人も。絶対次も(性犯罪を)しますと言い切る人もいます。相手を尊重し異性の特徴を認めることができる人は、性犯罪なんかしないと思う」(元受刑者)

専門家「導入には、弊害の徹底した検討が必要」

性犯罪の再犯についての平成26年のデータでは、強姦や強制わいせつ罪で服役した元受刑者が、5年以内にふたたび入所する率は21.1%。受刑者の5人に1人が戻ってくる計算になります。

このような状況を重く見て検討課題となった、性犯罪者へのGPS装着義務化。

専門家は、「導入した韓国では、再犯率が8分の1程度まで下がっているというデータもあるため、社会防衛のために必要だという声の一方で、プライバシーの侵害を懸念する声もある。導入することで生じる弊害がないのかどうか、徹底した分析が必要」と指摘します。

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