若いリウマチ患者 医療費が高額で妊娠諦める人も 「おばあちゃんがなる病気だと…」周囲からの理解も乏しく
高齢者の病気だと思われがちな「リウマチ」。実際には20代で発症する人も少なくありません。愛知県に住む若いリウマチ患者を取材すると「医療費の高さ」や「妊娠・出産」に悩む、若い世代ならではの実態が見えてきました。
上村愛弓さん(仮名・29)。2年前、「関節リウマチ」と診断を受けました。
「リウマチはほんと、おばあちゃんがなるみたいなイメージがあったので、そんな若い人がなるっていうことを全く知らなくて、すごいびっくり」(上村愛弓さん)
見た目には分かりにくく、そのため周囲からもなかなか理解されづらいといいます。
「温泉でよくなるイメージがあるみたいで、『温泉では治らないんだけどな』って」(上村愛弓さん)。
「関節リウマチ」は、関節が炎症を起こし骨が破壊され、放っておくと関節が変形することもある病気。
高齢者の病気と思われがちですが、実際には、どの年代でも発症する可能性があり、20代で発症する人も少なくありません。
日常生活の何気ない動作でも手首に痛みが走るという上村さん。
ポットを持ち、カップに湯をそそごうとしたところ、「ちょっと重たい」と思わず声が漏れます。
Q.今の動作がしんどい?
「普通に(持つに)はちょっと…負担がかかるっていう感じですね」(上村さん)
若いリウマチ患者が交流するSNSには、理解されない辛さを訴える声が溢れています。
「上司に関節リウマチと伝えると、『もう治った?』と言われます。日によって動ける日もあるので、ますます伝わりにくい」(SNSより)
中京テレビが20代~30代でリウマチを発症した女性56人に「発症後に悩まされたこと」をたずねたところ、33人が「周囲から理解されず悩んだ」などと回答しました。
高齢の患者に比べ、若いリウマチ患者が直面するもう一つの壁。それが「妊娠・出産」です。
「治療強化ばっかりしていて、妊娠のタイミングを逃してしまうと、その方の人生プランも変わってきてしまうので」(中部ろうさい病院 山本真理 先生)
一般的なリウマチ治療で使われる強い治療薬は、妊娠に影響を及ぼす可能性があるため、若い世代の患者は影響の少ない「生物学的製剤」という薬を選択するケースが多いといいます。
妊娠をのぞんでいる上村さんは、2週間に一度、この薬を痛みをこらえながら注射しています。
上村さんの毎月の薬代は5万7000円。診察費はこれと別に7500円かかります。
上村さんは職場の医療費補助があるため、実際に支払うのは毎月2万5000円ですが、なかには毎月4万円ほどかかる患者もいるといいます。
「この治療をずっと続けていくということであれば、医療費がかなり、ずっとかかることになる。お金の不安があります」(上村さん)
■「高額な医療費に、妊娠諦める人も」と専門家
リウマチ治療に詳しい、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターの村島温子先生は、厚労省に若いリウマチ患者の医療費軽減を訴えています。これまで診察した患者の中には、高額な医療費に妊娠を諦めた人もいたといいます。
「妊娠を希望している人や授乳中でも使用できるのが「生物学的製剤」。それを経済的な理由で諦めずに使えるのであれば、妊娠の可能性も高くなり、妊娠したいと思う女性も増えるのではないか。『産後1年間は支援するから安心して妊娠してね』というメッセージを送るだけでも、患者さんは励まされると思う」(村島先生)。
■原因不明だが“難病ではない”リウマチ
関節リウマチの患者が使用する高額な薬は、「高安動脈炎」「若年性特発性関節炎」「キャッスルマン病」などでも使われています。いずれも「難病」と指定されている病気で、薬の使用に国から“補助”が出ます。
関節リウマチは、まだ原因がよく分かっていませんが、患者数が全国に約70万人と多いこともあり難病には該当しません。
高額な医療費に妊娠を諦める人もいる若いリウマチ患者。多くの患者が今、支援を求めています。
中京テレビ「あなたの真ん中取材班」では、皆さんが暮らしの中で感じた疑問やお悩みを取材し、よりよい社会の実現を目指しています。詳しくは「あなたの真ん中取材班」ホームページをご覧ください。