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原発事故が引き裂いた…守れなかった命 「残された命を救う」農家から牛を引き取り愛情注ぐ女性の使命

報道局
特集 愛知 岐阜 三重 2022/03/11 10:35

もしいま大きな地震が起きたら…
実は、11年前のあの日、飼い主とペットに“突然の別れ”が。
さらに、“突然の別れ”はペットだけではなかったんです。

原発事故が引き裂いた…悲しい過去を抱えるネコたち

2011年3月の福島県。福島第一原発で水素爆発が起き、大量の放射性物質が飛散。原発から半径20キロ圏内に避難指示が出されました。

混乱の中、直面したのはあまりにもやるせない現実。

「1号機が爆発してバスに乗るときにペットはダメだって言われて、泣きながら「誰かもらってくれないですか?」と、その場所でみんな放すしかなくて」(赤間徹さん)

突然告げられた飼い主との別れ…。赤間さんは、許可を得て避難区域に入り、これまで1000匹以上の犬と猫を保護してきました。

会社の事務所を保護した動物の住みかに。治療やエサ代など、出費は11年で約2000万円に上るといいます。

「(避難区域で)亡くなっていくネコもいます。そのなかで生まれる子もいます。でも生まれる方が多いでしょう。まだまだ終わりはないですね、この活動には」(赤間さん)

餓死を免れても守られなかった牛たちの命

「突然の別れ」はペットだけではありません。

南相馬市小高区に住む半杭一成さん。かつてこの場所で酪農を営んでいました。

「2011年3月のカレンダーがいまだに残っている。大体どこの牛舎もそう。片付けることができない」(半杭一成さん)

「自分の希望で酪農を閉じたわけじゃない。原発事故によって辞めざるを得なかった」(半杭さん)


震災前、ここで40頭の牛を飼育していた半杭さん。原発事故で苦渋の決断を迫られました。

「(牛が)このままの状態で私は牛舎を後にした。家族を見殺しにする、なかばエサをやらなければ死ぬのが分かっている」(半杭さん)

3か月後、一時帰宅が許されて牛舎に戻ると、40頭のうち34頭が死んでいました。


牛を残して避難せざるを得なかった11年前のあの日。牛たちが死んでいた牛舎には、更に心痛める惨状が。
 
「この柱なんです。黙っちゃいましたね。餓死するっていうのは、こういうことなんだって。食べるものがないから、柱をかじる以外なかった」(半杭さん)

最後の力を振り絞って牛がかじった柱。この牛舎は壊せないと言います。

「餓死させたというのはすごく私にとってはつらいですね」(半杭さん)

そして、原発から20キロ圏内の家畜は農家の同意を得て殺処分されることが決定。

餓死を免れても牛たちの命は、守られなかったのです。
 

「帰還困難区域」に移住 農家から牛を引き取り「命を救う」

半杭さんの意志を受け継ぐかのように、この地に移住してきた女性がいました。

名古屋市生まれの谷さつきさんです。

「頑張ってこられた証しなんですよね。餓死とか殺処分とか、いろいろな結果になった方の思いが詰まっている牛を生かすことが私のミッションだと思っている」(谷さつきさん)

 

ここは福島第一原発がある大熊町、放射線量の影響で今も住むことはできない「帰還困難区域」です。

谷さんは、避難指示で取り残された牛を農家から引き取り、ここで飼育しています。

移住を決意させたのは、震災の翌月に見た牛の悲しいニュース。

「え…残されたんだ。まだ残っている命たちがいるんだって思いましたね」(谷さん)


農家から引き取った牛は11頭。もし谷さんが引き取らなければ、殺処分されていたといいます。
家族同様、牛にたっぷりの愛情を注いでいます。

 

縁のない地で女性一人での生活、谷さんを支えたボランティアは1000人に上ります。

「牛がかわいそうだっていういちずでやり始めて、みなさんが(谷さんを)応援するようになった。放っておけないというか、私もその中の一人」(東京都からのボランティア)

 

尾張旭市に住むボランティアの根本鎮郎さん。規格外のリンゴを根本さんが集め、毎月1回リンゴを運んできてくれます。

「谷さんの活動知ってね、私も大熊出身だから。これはもう放っておけないなと」(根本鎮郎さん)

 

牛が放牧されている場所。木が生えていますが、実は、震災前は田んぼだった場所。

原発事故で人が住めなくなると木や草が生え、農地の荒廃化が問題に。いま牛たちがいる場所も、最初は人の背丈を超える草が。

「5年間で“ジャングル”、10年たつと“山”になってしまう。それを防いでくれているのが牛です」(谷さん)


牛が一日に食べる草はなんと60キロ。草を食べて、木を倒す、さらに、牛ふんも落として農地を保全してくれます。

牛たちは、土地を未来につなげる役割を担っているのです。

「こういう状態でいざ何かやろうとしても、そこから何年もかけないと何もできない。ここだったらすぐにでも営農再開できるので、保全しておくことが大事だなと思います」(谷さん)


いつかまた人が暮らせる日まで。谷さんは、牛とともに待ち続けます。

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