• index
  • program
  • Locipo
  • news_weather
  • announcer
  • event
  • chukyokun
  • present
  • TVschedule

中京テレビNEWS

こちらでもニュース配信中!
YouTubeでは過去に放送した特集・ドキュメンタリーも!

【検証】異例の「津波警報・注意報」 約14時間分の“ツイート”から見えた災害時に求められる避難行動

報道局・DX取材班
特集 愛知 岐阜 三重 2022/04/22 6:10

突然の知らせに、驚いた人も多いのでは――。トンガ沖での噴火に伴う異例の津波警報。そのとき、避難の対象者は何を考え、どう行動したのか。本記事では、当時のTwitterへの投稿を分析し、いつ起きるかわからない”次の大災害”に向けた「避難行動のあり方」を検証した。 

地震が起きていないのに“津波”情報 Twitter上には困惑が… 

2022年1月16日午前0時すぎ、スマホからは警報音が鳴り、テレビは一斉に特別番組に切り替わった。気象庁が奄美群島・トカラ列島に津波警報を、全国の広い範囲に津波注意報を発表したことによるものだ。その後、岩手県にも津波警報が発表され、警報・注意報がすべて解除されたのは、約14時間後のことだった。 

“津波”の原因は、前日にトンガ沖の海底火山が噴火したことによるものだ。津波を起こすような地震は起きていないが、大きな潮位変動がみられたため、気象庁は「津波警報・注意報」の仕組みを活用して情報を発信した。 

Twitter投稿から浮かび上がった当時の避難行動

今回、Twitter JapanとJX通信社協力のもと、津波警報・注意報の発表から解除まで、約14時間分の投稿を収集・分析した。

まず、「避難」という言葉を含む投稿を抜き出すと、その数は4.2万件に上った。 

ところが、これらの投稿から、津波警報・注意報によって“避難の必要がある当事者”と思われる投稿を抽出すると、その数は激減し、わずか740件だったことが分かった。(具体的には「沿岸の人は避難してください」といった、“当事者ではない”と思われる投稿を排除し、残った投稿の件数) 

今回は、気象庁すら戸惑いを隠さなかった異例の“地震なき津波”で、避難よりも前に”未知の出来事”を理解するのに時間がかかった、というのは間違いないだろう。さらに「避難すべき人に、投稿する余裕がない」「深夜の出来事だった」という事情もある。ただ、日本国内で圧倒的なユーザ数を誇るTwitter上で、“避難の当事者”と思われる投稿がわずか740件というのは、驚くべきほど少ない数ではないだろうか。 

さらに、分析を進めると740件の投稿のうち、「高台に避難した」などと実際に避難したことを知らせる投稿は、220件しかなかった。

もちろんTwitterに投稿された情報が、実際に行われた避難のすべてを表しているわけではない。ただ、“当事者”の投稿の多くが「避難するべき?」「ヤバくなったら避難します」などと避難を迷ったり、ためらったりする投稿だったことから、気象庁の避難の呼びかけに対して、多くの”当事者”が応じていなかったことは明らかだ。

生死を分ける「正常性バイアス」 

トンガ沖の噴火のように分からないことが多いときこそ、不測の事態に備えるためにも避難が重要になるのだが、なぜ、避難が呼びかけられても、人々の避難行動につながらないのか。

データ分析などを専門にする、国際大学の山口真一准教授に見解を聞くと、「正常性バイアス」という心理を挙げた。 

「大きな地震や津波の被害があるかもしれないという時に、“自分は大丈夫だろう”と正しく判断できなくなるようなバイアスが働く。そうした心理が、Twitterの投稿に如実に表れている」

当時の一部の投稿からは、無意識のうちに”自分は大丈夫”と思ってしまう「正常性バイアス」が働いたことが見て取れるという。それに加えて、中には「避難?無理だろ」などといった他者に同調を求めるかのような投稿もみられ、結果的に避難に後ろ向きな姿勢が広がっていったようだ。

では、こうした心理をもつ私たちは、今後どう備えていけばよいのだろうか。山口准教授が続ける。 

「災害を想定した避難訓練やシミュレーションを定期的に行っておく。そして、人間は本当の危機の時に正常性バイアスによって正しい判断ができない可能性があることを知っておく」 

 命を守るための避難訓練に加え、「正常性バイアス」という心理があることを理解しておくことが、いざというときに行動を起こすための“自分のスイッチ”を押すことができるカギとなるのだ。

“1週間の事前避難”が求められる可能性 

今後起きるかもしれない災害のひとつ、南海トラフ巨大地震。内閣府によれば30年以内に8割程度の確率で発生するとされ、甚大な被害が想定されている。この南海トラフ巨大地震の可能性が高まっているとき、国は「南海トラフ臨時情報」を発表することにしている。 

この臨時情報のうち「巨大地震警戒」という情報が出されれば、地域によっては地震が起きる前から「1週間の事前避難」が求められるのだが、“避難の当事者”たちが実際に行動するかどうか、その心理的なハードルは高いことが想像される。 

しかし、南海トラフ巨大地震では最悪の場合、30メートルを超える巨大津波が襲来して、30万人を超える死者が出るなど、想像をはるかに超えるような被害が想定されている。こうしたリスクの可能性があることを考えれば、「事前避難」によって命を守る必要性は明らかだ。 

いざという時に、自分自身の、そして家族など周囲の命を守るために――。食料などの備蓄や家具の固定など基本的な対策に加え、今回の事例から「正常性バイアス」という心理を学び、冷静な判断を心がけることが大切だ。 

※この記事はTwitter JapanとJX通信社の協力により取材したものです。

この記事をシェアする

中京テレビNEWSLINEで中京テレビのニュースを読む 友だち追加

最新のニュース

中京テレビNEWS トップへ