福留、初タイトル獲得の陰には・・・
〜2002年12月15日(日)〜

今シーズン、初のセ・リーグ首位打者に輝いた福留孝介選手が、先日ゲストでスタジオに来てくれたとき、 終盤戦を大いに盛り上げた巨人・松井とのデッドヒートについて改めて聞いてみた。
彼が松井の三冠を阻止し、初のタイトルを獲得できた一番の理由は、その強靭な精神力にあったといっていいだろう。

最大のヤマ場となったのは、松井・3割3分8厘2毛、福留3割3分7厘8毛と、 その差わずか4毛で迎えた今季最後のG×D直接対決3連戦(9/27〜29・東京ドーム)だが、スタンドを埋めた観客の殆どが 松井を応援する中、1・2戦と福留は8打数ノーヒットに終わり、この時点で松井との差は2厘差に開いた。
初めて体験する熾烈なタイトル争い…。しかも「松井三冠」を期待する空気に押され、普通ならここで『やはりダメか…』と 諦めムードに傾いてしまうところを『何くそ!』と開き直り、3戦目に2安打。 再び松井に7毛差と迫り引き離されなかったのは立派だった。
この世界、敵に後ろを見せたら終わりなのである。 プレッシャーをはねのけ《ライバルの前で打った》ことが首位打者を獲れた理由であり、 この経験は今後の彼の野球人生においても大きな自信となるだろう。

その開き直りのキッカケを与えた山田監督の采配も見逃せない。
3戦目の第2打席、福留のバッティングに迷いがあると見るや、 思いきり打たせようとヒットエンドランのサインを出したのだ。これが功を奏し待望のヒット。その後の打撃爆発につながった。
個人タイトルは自分の力だけで獲れるものではない。首脳陣・チームメイトの協力があってこそ初めて可能なのだと、 福留自身改めて痛感したのではないだろうか。逆に、佐々木コーチと二人三脚で打撃改造に取り組む福留のひたむきな姿をずっと 見ていたからこそ、投手陣も『福留にタイトルを獲らせてやろう』と、闘志ムキ出しで松井に向かっていったのだ。

タイトルホルダーになったことで来季は相手投手のマークも厳しくなるだろうが、大事なのは今季掴んだ《自分の型》を 崩さないことだ。そうすれば連続首位打者も決して難しいことではないだろう。
広角に打てる今の技術をキープしつつ、そこにパワーが加われば、それこそ三冠王も夢ではない。 真価を問われる来年はチームリーダーとしてより一層の活躍を期待したい。

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