野口茂樹 エース復活への第一歩
〜2003年4月10日(木)〜

 前回のこのコラムで苦言を呈した野口が、先週土曜日のベイスターズ戦で見事今季初勝利を 挙げた。次回は立て直してくれるだろうという期待に応えてくれて、元投手コーチとしては嬉しい限りだ。
 前回のジャイアンツ戦と今回のピッチングの最大の差は、腕がよく振れていたことである。 故障上がりのピッチャーは皆そうだが、ケガが完治していても、確信が持てるまではつい 恐る恐るのピッチングになってしまうものだ。前回の野口はまさにそうだった。ヒジへの 不安がリリースポイントを不安定にし、結果コントロールも定まらず、持ち前の 「タテに曲がるスライダー」も決まらなかった。
 これに味方が大量点を取ったことによる妙な力みも加わり、4回途中で降板という不本意 な結果になったのだが、それでも私が「次回は大丈夫」と予想した理由は、一つだけ次に つながる収穫があったからだ。それは「77球」という投球数である。
 確かに去年も消化試合で何試合か投げているし、今季のオープン戦にも登板しているが、 それはあくまで調整登板に過ぎない。開幕2戦目という大事な試合で100球近い球数を 投げたことが重要なのだ。野口自身も「これだけ投げて大丈夫なら、今年は行けるぞ」と 確認出来たのではないか。

 今回、怖がらずしっかり腕を振り抜いていたのは、その確信があってこそである。力のあ るストレートに加え、タテに曲がるスライダーで内野ゴロに打ち取るお得意のパターンも 何度か見られ、状態は完全に好調時の野口に戻っていた。
さらに試合が僅差の接戦で、適度に緊張感を保てたのも幸いした。
元気のない横浜打線相手とはいえ、6回1/3を投げ 3安打1失点は堂々の内容である。球数も104球、これで復活へのメドがついた。

 課題は今後も本来のピッチングが出来るか、実戦の勘をどう取り戻すかだが、とりあえず 先発10試合目までは焦らず、無理のないピッチングを心掛けてもらいたい。それまでは 首脳陣にも、出来れば中6日の間隔でローテーションを組んでほしいと思う。
彼は川上同様、セ・リーグを代表するピッチャーだし、野口の復活は、今季ドラゴンズが 優勝するために必要不可欠な条件だからだ。ペナントレースを盛り上げる意味でも、教え子の完全復活を祈りたい。

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