セ・リーグ守護神 総崩れ現象の背景は?
〜2003年6月12日(木)〜

試合の最後を締めるクローザー(抑え投手)のことを「守護神」と呼ぶようにな った のは いつの頃からだろうか。以前は「火消し役」とも呼ばれたその守護神が、どうや ら今 季は 逆に火に油を注いでしまうケースが多いようだ。

その典型的な例が6月1日に千葉マリンスタジアムで行われたヤクルトー中日戦 であ る。 試合は後攻のスワローズが2対1と1点リードのまま最終回を迎え、9回表は当 然の 如く 守護神・高津がマウンドに上った。今季の高津は16セーブポイントを挙げてい るも のの 毎回ヒヤッとする内容のピッチングが続いているが、この試合もランナーを許す 苦し い展 開になり、さらに一塁手・ベッツのまずい守備もあって2点を献上。一挙逆転と なっ た。
こうなると、9回裏はドラゴンズが守護神を送り出す番だ。ギャラードがマウン ドに 立ち 2死を取った所までは良かったが、ラミレス敬遠から流れが微妙に変わり、2死 満塁 から 城石の中途半端な当たりがショート横を抜け、まさかの逆転サヨナラ負け。両チ ーム のク ローザーが共に役目を果たせないという、文字通り「締まらない」試合になった 。

そして去年あれだけの活躍をしながら、今年は出るたびに打ち込まれ、遂にファ ーム 落ち したジャイアンツ・河原についても、ファンとしては「一体どうしたんだ」と言 いた いと ころだろう。
なぜ今季は「守護神」が総崩れになってしまったのだろうか?

クローザーの先輩として敢えて言わせてもらえば、その原因は「低目一杯に力の ある 球を 投げ込んで行く」というストッパーの鉄則を怠っているからだ。そうすればどん な強 打者 が相手でもそう簡単に打たれることはないはずだが、その基本中の基本に反して 中途 半端 な球を不用意に高目に投げれば、打たれるに決まっている。
私の現役時代にはよく「キャデラックに乗りたければ、低目に投げろ」とコーチ に言 われ たものだが、このメジャーリーグの格言は今も通用する至言である。そんな言わ ずも がな のことが守れていないのは、私の見るところ調整ミス、昨年の疲れをオフにきち んと 取り 除かなかったことが原因だと思う。
1年フルに働いた抑え投手にたまる疲労は尋常ではない。肉体面だけでなく精神 面も 含め 疲れを取り除かないと、自分では万全のつもりでもどこかでフォームに狂いが生 じて 来る ものだ。ギャラードは練習中のアクシデントで指を痛め現在ファームで調整中だ が、 逆に これをいい機会として、心身共にリフレッシュしてもらいたい。
今年は幸い、代 役と して 去年までバファローズの守護神だった大塚がいる。外角低目に力のあるストレー トを 投げ られる彼なら全く不安はない。ギャラードの復帰後も、夏以降を見据え大塚との 「ダ ブル 守護神体制」を敷くのも一案だと思う。

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