復活へいよいよ秒読み…川崎憲次郎
〜2003年8月6日(水)〜

 『対巨人戦・現役最多勝』の実績を引っさげ、3年前のオフにスワローズから鳴 り 物入りでFA移籍しながら、右肩痛を発症し未だ一軍登板のない川崎憲次郎投手が いよいよ復活に向け、カウントダウン体勢に入った。
 スポーツスタジアムでは早くから川崎を追いかけ、その都度現状を克明にレポー ト してきたが、3年ぶりの一軍復帰が見えてきた7月からは毎週《川崎情報》をお送り し ているので、いつ一軍に上がって来るのか、関心をお持ちの方も多いと思う。私 も ここ最近、川崎のファームでの登板試合は全てこの目でチェックしているのだが 、 結論から言うと、『今すぐ一軍に上げてもいいレベルに回復している』といえる 。

 6月に実戦登板を始めた頃は、まだまだ本来の出来には程遠い内容だったが、7 月 25日に登板した際には(vs大阪近鉄・ナゴヤ球場)下半身の使い方で注目すべ き 点があった。投げる際、軸足が『つま先立ち』をしていたのだ。
 これによってカカトが高く上がり、その反動をうまく利用することで右ヒジの位 置 も高くなる、つまり『上から投げ下ろす』ピッチングが可能になった。こうなれ ば 球威も増し低目への制球力も付いて来る。川崎はこの試合で、復活への課題を1 つ クリアした。
 続く7月31日、北神戸で行われたサーパス戦では先発で5回を投げ被安打10 、 3失点と結果こそ芳しくなかったが、今回も内容には見るべきものがあった。
 右腕のスイングの角度が良くなってきたのだ。 理想的な腕の角度とは喩えて言うと、教室で先生に名前を呼ばれた時に『はい! 』 と手を挙げた時の角度に近い。あまり腕を高く上げすぎると、肩が回らなくなっ て 腕の振りもぎこちなくなるが、腕が自然な角度で出て肩が回れば、ヒジが外から 出 て行く形になり、きれいなスイングの軌道が出来る。 この試合での川崎は、初回こそ『腕の位置を高くしよう』と意識するあまり肩が 回 らずスムーズな腕の振りが出来ていなかったが、試合が進むにつれ自ら修正。3 回 にはもう理想的な腕の角度で投げていた。これでまた1つ、課題をクリアだ。

 残る課題は『変化球』である。川崎の伝家の宝刀は『シュート』と『フォーク』 の 2つだが、31日の試合で投げたシュートは、バッターの懐を鋭くえぐる全盛期 に 近いものもあった。
 川崎のシュートは、曲がり自体は小さいのだが、打者の手元 で グッと変化するため、目で見たポイントと実際に打つ時のポイントがずれ、結果 詰 まった当たりになってしまう。打者にとってはまことに厄介なこのシュートが再 び 投げられるようになったのは大きい。
 しかし、今回もフォークは1球も投げなかった。フォークは投げる際、手首に力 が かかるボールなので、その衝撃がヒジや肩にも及んでくる。故障明けの川崎の場 合 まだ投げるのに勇気のいるボールだが、私の見たところ、今のフォームで投げて い る限りヒジや肩に負担がかかることはないだろう。試合後川崎本人に聞いたとこ ろ 『近いうちに必ず投げます』とのことだった。残る唯一の課題・フォークは本人 の 気持ち一つといえよう。

 注目の次回登板は今週土曜日の大阪近鉄戦だが、内容が良ければ短いイニングで 降 板させ、翌週、地元ナゴヤドームで行われる巨人戦(8/12〜14)に中継ぎ か いきなり先発で起用するのも面白いのではないか。巨人キラーで鳴らした彼にと っ ては最高の舞台となるだろうし、また自信もつくはずだ。
(土曜日の川崎のピッチングについては、翌日放送のスポスタで詳報します。)

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