惜敗を来年の糧に・・・日本シリーズ総括
〜2004年10月29日(金)〜

第7戦までもつれた込んだ今季の日本シリーズは、西武ライオンズが逆転優勝を飾り、落合監督の公約でもあったドラゴンズの50年ぶりの日本一は、あと一歩のところで夢と消えた。先に王手を掛け地元・ナゴヤドームに帰って来た時は、誰もが悲願達成を確信したと思うが、なぜドラゴンズは頂点に手が届かなかったのだろうか。

敗因については様々な見方があると思うが、私は第3戦の岡本続投がすべてだったと思う。6対4で迎えた7回裏に登板した岡本は、2点を奪われ同点に追い付かれ、なおも2死満塁のピンチ。ここで打席にはカブレラ。落合監督はマウンドに向かったが、一旦ブルペンから高橋聡文が出て来たにも拘わらず、なぜか岡本は降板せず、高橋は再び引っ込んでしまった。続投の結果は、ご存じの通り満塁ホームランという最悪の事態となったが、あの時マウンドに向かう際、落合監督はブルペンにも交代を伝えたはずだ。しかし、高橋が一旦ブルペンを出たにもかかわらず、岡本を代えなかったことで、選手・コーチの間にちょっとした不信感が生まれたのではないか。その不信感が選手の心理に微妙な影を落とし、シーズン中には考えられないようなミスを生んだのではないかと思う。第7戦で出た井端、谷繁のエラーがその典型だ。
日本シリーズはトーナメントと同じで、ちょっとのミスが命取りになる。名将と呼ばれた鶴岡、三原両監督は短期決戦を『石橋を叩いて渡る』采配で制してきた。そういう慎重さがドラゴンズ側に欠けていたことは否めないだろう。同様に、第7戦で大量失点のキッカケとなったドミンゴのボークも、シーズン中から指摘されていたものだけに、細心の注意を払いたかった。

さらに言うと、第2戦、ナゴヤドームで松坂をKOし、逆転勝ちを飾った後のインタビューで落合監督は『(このまま4連勝して)もう名古屋には帰って来ないかもしれませんね?』と水を向けられ、『その可能性は十分ありますよ!』と口を滑らせたが、まだ1勝しか挙げていない段階で、この一言は余計だった。シリーズは隙を見せたら終わりなのだ。平成元年のシリーズで、近鉄が巨人に3連勝した時、近鉄の加藤哲郎投手が『巨人はロッテより弱い』と言ってジャイアンツナインの闘志に火をつけてしまい、そこから4連敗した例もある。ドラゴンズはシーズン中、相手の隙を突く野球で勝ってきた。試合後のインタビューでも余計な事を一切言わなかった落合監督らしくない不用意な発言で、逆に相手に隙を見せてしまった気がしてならない。

ともあれ、今年のシリーズは近来稀に見る熱戦が続き、勝負としては非常に楽しめるものとなった。シリーズで3勝を挙げたのも50年ぶり、敗れたとはいえ、選手の頑張りと、チームをここまで導いた落合監督の手腕は高く評価されてしかるべきだろう。
来季は追われる立場になるドラゴンズ、連覇を阻止するためジャイアンツ、タイガースも万全の補強をし立ち向かって来るに違いない。ペナントレースは今季よりも一層厳しいものになるはずだ。大事なのは、シリーズの敗戦を来季に活かすことである。再び足下を見つめ直し、51年ぶりの悲願達成を期待したい。

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